コラム

ロジカルシンキングとラテラルシンキングの違いと企業で活かし方

依然として厳しい競争を強いられるビジネスの現場では、論理的思考がもたらす問題の抽出と解決手法の可視化は非常に有効だと期待されています。しかし一方で、自由な発想と多様性も、成熟した市場で優位となるためには必要と考えられています。それら相反する命題に、ロジカルシンキングおよびラテラルシンキングの導入は解決策となるのでしょうか。それぞれの手法について見ていきましょう。

ロジカルシンキングとは?

ロジカルシンキングは「論理的思考」と訳されることが多い言葉です。国内でベストセラーとなった書籍『ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル』はよく知られていますが、その後さまざまなビジネスの場においてその手法が導入されることとなりました。コンサルティング業務への導入はもちろん、セミナーや講演でもしばしば取り上げられ、今ではすっかり日本のビジネスに根付いた思考方法・手法であるといえるでしょう。

特徴は、求める結論に行きつくために根拠となる適切な理由を明確に提示する点。そのため、相手に理解してもらいやすく、また説得力も増します。
しかし、結論を導き出すための前提が、事実に基づかず予測や推測に起因する場合、最終的な結論の正当性を失いやすくなります。また、得られる結論も画一的なものになりがちなので注意が必要です。

ラテラルシンキングとは?

ロジカルシンキングと対比される言葉に、ラテラルシンキングがあります。こちらは主に「水平思考」と訳されます。ラテラルシンキングは、1960年代後半、創造性開発の権威といわれるエドワード・デ・ボノ氏が提唱した思考方法です。

課題解決に当たってステップ1からステップ2と、順を追って論理を積み重ねることで結論を導くのがロジカルシンキングですが、ラテラルシンキングの場合は、そのときどきで「前提を疑う」「新しい見方をする」といった多様性を思考手順に取り入れます。メリットは、既成概念にとらわれず斬新なアイデアを生み出しやすいことや、多様な視点からの考察が可能なことなどですが、その反面、論理性に欠ける場合があるという欠点もあります。

ロジカルシンキングとラテラルシンキングをビジネスの場で生かすために

2つの手法をビジネスの場で活かすために必要なことは何でしょうか。

取引先からの依頼に忠実に、より適切に対応するということはもちろん重要ですが、ビジネスの場ではそれだけでは不十分です。より高い次元で取引先の満足度を上げていかなければ成長は望めません。分かりやすく対比させるなら、相手に理解や納得を得るためにはロジカルシンキングを、同意や共感を得るためにはラテラルシンキングを、と考えると理解しやすいかもしれません。

例えばロジカルシンキングの場合、代表的な考え方として「ロジックツリー」があります。これは複雑な要素が絡み合う課題について、最終的なゴールから逆算して要素を分解し、整理していきます。論点の抜け漏れや重複がなく、それぞれの要素の関係性もわかりやすく整理できるので、会議を効率よく進めるためにも役に立ちます。商品開発の場においては、モデルチェンジを重ねてより良い製品を生み出していく場合にはロジカルシンキングが適しています。

ラテラルシンキングの場合はどうでしょう。先に述べたように「前提を疑う」「新しい見方をする」という考え方をするため、常識にとらわれない自由さが最大のメリットです。これは、商品やサービス企画のブレインストーミングの場で役に立ちます。これまでの市場にないような新しい概念の製品を送り出すにはラテラルシンキングが有用と考えられます。

2つの考え方を比較する例として、家庭用の音響機器について考えてみましょう。利用者のニーズに沿って、性能をブラッシュアップしたり、使い勝手を良くした新製品を企画したりするのがロジカルシンキング。音楽は家の中で聴くものという概念を取り払って、携帯用の音楽機器を企画するのがラテラルシンキング、と例えられるのではないでしょうか。

どちらが良い、悪いということではなく、状況に応じて使い分けることが必要です。

ロジカルシンキングとラテラルシンキングを身につけるには

これらをビジネスの現場で活かすにはどのような訓練を積むとよいのでしょうか。
最初は、日々の業務のなかでこれら手法を当てはめていく癖をつけることです。常々、自分のなかでロジカルシンキングと、ラテラルシンキングを意識した考え方を行っておけば、いざその場に向き合った際に、スムーズな対応ができます。以下に、2つの思考法を身につけるための心掛けをまとめました。

ロジカルシンキングの場合

  • 事実を客観的に提示する
  • 各要素を明確な言葉として記録する
  • 図式化や数値化することを心掛ける
  • 論理が飛躍しないように注意する

ラテラルシンキングの場合

  • 既成事実を視点を変えて再検討してみる
  • 非論理的な発想を否定しない
  • 普段から異分野にも留意しておく

夏目漱石の小説の一節になぞらえて、「智に働けば角が立つ」ともいわれる日本社会です。いかに正論であっても、その過程が強引なものである場合、結果は理想通りにならないことも十分考えられるでしょう。
ビジネスの場におけるさまざまな問題に対する思考法、ロジカルシンキングとラテラルシンキング。バランスよく活用していきたいものですね。