コラム

グローバル人材とは?求められる素養や育成のカギ

「ジェトロ世界貿易投資報告(2017年版)」によると、日本企業の2016年度の海外売上高比率は56.5%と、前年度の58.3%よりわずかに下がりましたが、依然、高い水準にあります。その一方で、海外進出とグローバル人材の育成の足並みがそろっていない企業も多いようです。その原因を探るとともに、グローバル化のための人材育成について考えてみましょう。

グローバルな企業と人材とは

自動車や家電、エレクトロニクス産業などは、安い人件費を求めて工場を海外に移転する傾向があります。そもそもグローバルな企業や人材とは、どのようなものなのでしょうか。

海外に生産や販売の拠点がある企業は、現地の人とコミュニケーションをとって事業を進め、その文化や習慣を見定めてマーケティング活動をします。しかし、そこには文化的な違いによるビジネスの進め方や商品等の訴求に関する壁や溝があるものです。グローバル企業は、その一つひとつに対応する役割を担います。そして、その仕事の最前線で活躍する社員がグローバル人材です。専門領域のビジネスのプロフェッショナルであるうえに、労働や販売環境に関わるその地域の文化や習俗にも慣れ親しんでいるほうが優位であるのはいうまでもありません。

2014年11月~2015年2月にかけて行われた経団連の調査によると、「グローバル人材に求められる素質、知識・能力」として、約47%の企業が「英語をはじめ外国語によるコミュニケーション力を有する」ことを挙げています。また、これを上回る約76%の企業が「海外との社会・文化、価値観の差に興味・関心を持ち、柔軟に対応する姿勢」と回答しています。グローバル企業で働く人材に求められるのは、語学力だけではないのです。

※上記経団連の調査結果は、いずれも複数回答によるもの。

語学力以外のトレーニングも重要

社員のTOEICの平均点を高めること、語学研修に参加させることだけで満足してはいないでしょうか。語学力は重要ですが、トレーニングがそこに集中しすぎるのは考えものです。

現地の人とのコミュニケーションには、語学力はもちろん相手への理解力が欠かせません。異文化への興味が広がるような心に響く体験も必要でしょう。さらには、会社がグローバル化を目指す理由を明示することも大切です。

ポテンシャルの高いグローバル人材を育成するには、語学力以外のスキルを伸ばすためのトレーニングも検討すべきだといえるでしょう。

総合力の高い人材育成を

グローバル化には、総合力の高い人材の育成が必要です。具体的にはどのような素養が求められるのか、以下で確認してみましょう。

多様性を認められる

文化が異なれば、考え方や行動も大きく変わります。その特性に合わせた仕事の進め方が前提となるので、まずは違いを認める必要があります。「それはおかしい」と否定するのではなく、「そういう考え方なのか」と受け入れる姿勢が大切です。

外部環境への適応力

海外では、予測できないことや不確実なことが多くなります。それに対応する能力が必要になるでしょう。

聞く力・伝える力と論理思考

相手の意見や思いに耳を傾けるとともに、自分の考えを相手に伝える力が重要です。論理的にしっかり伝えないと、それが日本では常識でも単なる押しつけになってしまいます。

相互理解と成長志向

自分も他者と異なる点があることを認識することで、他者の多様性を認められるようになります。そして互いに理解し、一緒に成長するという考え方が大切です。

語学力

語学は「目的」ではなく「手段」です。まずは仕事を達成できる程度の語学習得を目指し、それ以上に語学力を磨く余裕があったとしても、その時間を使って先に異文化への心構えや予備知識、そのなかでのリーダーシップの取り方、知識と技術の伝え方や吸収のしかたなどを学んだほうが、グローバルな対応力が早く身につくことになるでしょう。

語学の勉強は「最初の一歩」

日本人同士でも、意思の疎通が難しい場面があります。母国語以外でのコミュニケーションとなれば、なおさらです。同僚に聞かれても恥ずかしくない英語のレベルになってからネットミーティングで発言してみよう、などと考えていては、その機会は永遠に訪れないかもしれません。

それよりも、覚えたての言葉でかまわないので、実際にコミュニケーションをとったほうが、語学習得の近道かもしれません。そのやり取りから相手との生活や習慣の違いを感じとることが大切です。そこが異文化理解の入口であり、グローバル人材になるために必要な学習や経験が見えてくることになるでしょう。語学の勉強は、「最初の一歩」なのです。