コラム

自律型組織の作り方
~実現する3要素とメリデメ、GRPIモデルとは

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1.「自律型組織」とは何か

自律型組織とは自律的に働く社員で満たされた組織といえます。つまり、常に指示命令を受けながら管理される社員と反対の立場をとっている社員の集まりです。自律型とは、自分で立てた規範に従い、自分の職務を理解し、役割遂行のため指示を受けることなく遂行していく社員を指します。

いまはVUCAと呼ばれる変化のスピードが高い時代なので、さまざまな変化に素早く柔軟に対応できる組織が求められ、上司の指示を待たず自分の意思で行動できる自律型人材の必要性が高まっています。

自律型組織と対比される組織としてピラミッド型組織があります。ピラミッド型組織とは組織の上層部の指示や方針に下の階層が従うという組織構造です。ピラミッド型組織の特徴として、責任範囲や業務範囲が明確に定まっているため、上から下に統制が取りやすいので、大規模な組織に向いていると言われています。
ただし、情報伝達に時間がかかることや、上位の指示が末端に十分反映されないという課題もあります。

.自律型組織の具体例

これまで自律型組織がどのようなものであり、なぜ求められているのかということを解説してきましたが、ここからは自律型組織の具体例を3つ解説します。

  • アジャイル型組織
  • ティール型組織
  • ホラクラシー型組織

アジャイル型組織

アジャイル型組織とは組織を取り巻く環境の変化に対して、柔軟に素早く対応可能な組織構造のことを指します。特徴は現場に一定の権限を与え、実行と改善を短期間に繰り返す組織です。アジャイルとは元々ソフトウェアの開発手法の一つであり、アジャイルとは「素早い」という意味が含まれています。

ソフトウェアの開発手法におけるアジャイル開発と対比される考えとして、ウォーターフォール開発という開発手法があります。
このウォーターフォールという開発手法は最初に全体の仕様を細部まで設計し、仕様変更は基本的に前提としていません。
それに対して、アジャイルは反対の立場を取りますので、全体の仕様は大まかに決めておいて、テストや検証を繰り返し改善していく仕様変更が前提となった開発手法です。
このように変化が激しい現代においては、アジャイル型組織のように、まずは取り組み始めてみるという考え方が重要です。

ティール型組織

2014年フレデリック・ラルー氏の著書『Reinventing Organizations』の中で紹介されたのが「ティール組織」です。ティールとは色を表す言葉であり、緑と青の中間の色を指します。ティール型組織は組織体の進化を5つの組織モデルを色で表現しようとする考えで、最も進化が起きている状態がティール(進化型)とされています。

まずは、リーダーの圧倒的な力によって支配する組織形態のレッド(衝動型)からスタートし、アンバー(順応型)、オレンジ(達成型)、グリーン(多元型)、ティール(進化型)に進化していくという考え方です。ティール組織は組織を一つの生命体として捉え、組織は経営者や株主だけのものではなく、組織に関わるすべての人のものと捉えています。組織の目的を実現するために共鳴しながら行動をとる組織であり、ティール型組織には、マネジャーやリーダーといった役割が存在せず、上司や部下という概念も存在しません。

ホラクラシー型組織

社内に役職や階級などの区別がなく、役割によって紐づけられたグループが能動的に活動する組織名称を指します。ホラクラシーは2007年にアメリカのソフトウェア開発会社ターナリー・ソフトウェアの創業者ブライアン・ロバートソン氏が提唱し、様々な団体で採用されるようになりました。グループ自体がサークルのようなチーム単位でまとまって役割を与えられます。

ホラクラシー型組織では、組織の中に上下関係がない分、役割が明確化されています。ただし、チーム単位でまとまって役割を与えられるため、業務を役割ごとに切り分け、それぞれを担当する社員が自発的に行動していきます。

3.自律型組織のメリットとデメリット

自律型組織のメリットとデメリットはなにか、詳しく説明しましょう。

メリット

A)意思決定が早い

自律型組織の大きなメリットは意思決定が早くなります。現場の課題に対して解決策をすぐに実行できるためです。上層部へ決裁を取る時間が短縮されます。

B)主体性と責任感の強化

上司や管理職から言われたことを実行するより、自ら決めたことを実行することのほうが、大きな主体性と責任感を生みます。自分で決めたことは大きな力強さを発揮します。

C)実行力の高い社員が育成できる

自律型組織は、自分で考えて行動することが求められます。実行力とは、自らPDCAサイクルを回すことと言えます。
自ら仮説を立て、どうすれば課題が解決できるのか、そして実際に取り組んだ結果、うまくできたこととできなかったことを検証して、さらに質の高い成果が出せるように考えられることが実行力と言えます。

デメリット

A)責任の所在が不明瞭になりがち

ピラミッド型組織のように組織単位の長がいなければ、誰がどのような判断のもと行動し、その結果マイナスな結果が出てしまったか追跡することが難しくなり、その結果、責任の所在が不明瞭になりがちです。
そのため、一人一人がどのような意思決定を行なったかが後で検証できる仕組みを取る必要があります。

B)所属するメンバーのレベルが一定以上なければ成立しづらい

自律型組織はそこの組織に所属するメンバーが自ら判断・行動できなければ、機能しづらい組織と言えます。加えて、自己管理能力も求められます。そのためにはメンバー一人ひとりの能力が一定水準に達していなければ自律的に考えて行動することができません。
そのため、どの程度の能力水準に達したら、自律型組織のメンバーの一員として認められるか予め定義しておくことが望ましいでしょう。

C)マネジメントスキルが向上しづらい

自律型組織は所属するメンバー個々に意思決定するため、一人のマネジャーが組織を管理する従来型のマネジメントスキルは不要です。
そのため、自律型組織運営をしていたマネジャーがピラミッド型組織のマネジャーに異動した際に、これまでのマネジメントスタイルが通用しなくなります。

このようにメリットとデメリットがある点を理解したうえで、皆様の組織運営に自律型組織がどのような効果をもたらすのか検討することが重要です。

4.近年「自律型組織」が必要とされている理由


あらためてなぜ自律型組織が必要とされているのでしょうか。その理由ですが、変化する外部環境に適合するというスピードに関する話は先に触れましたので、ここではエンゲージメント向上や多様な働き方、多様な価値観を尊重することができる点について解説します。

例えば、自分のライフスタイルに合わせた働き方ができると働きやすさに繋がり、組織に対するエンゲージメントが高まります。また、仕事の進め方やアイデアについて自由に発想することができれば、多様な価値観を拾い上げることができ、商品やサービスに新たな付加価値を産む可能性が高まります。


5.自律型組織を実現するための3要素

では具体的に、自律型組織を実現していくためにどのような要素が必要なのでしょうか。

ビジョン、ミッションに対する社員の共感

自律的に働くためには、企業や組織のビジョンやミッションに対してそこで働く社員が共感していることが大切です。

バリュー(行動指針)の浸透

ビジョンやミッションに共感したうえで、そのビジョンやミッションを実現するために行動指針が社員に浸透していることが重要です。
ビジョンやミッションに共感していても、組織の中で期待されていない行動をしてしまっては、ビジョン、ミッションの実現には繋がりません。

挑戦的な目標の設定

なぜ、挑戦的な目標が必要なのかというと、これまでの延長線上にある目標では、これまでと同じ行動を取ろうとしがちです。具体的には売上100を110にしようと考えた時、10%どこかで頑張り成果を出そうとします。しかし、売上100を200にしようと思うと、これまでのやり方だと到底達成できないので、これまでのやり方自体を大きく見直そうと考えるわけです。このように挑戦的な目標設定はこれまでの行動を大きく変化させるうえで大きな影響を与えます。

6.自律型組織の作り方

自律型組織を作るためにはGRPI(グリッピー)モデルを元に考えます。GRPIモデルとはアメリカの組織開発コンサルタントのベックハード氏が提唱したものであり、組織を構成する要素の頭文字をとった考え方です。

A)Goal(目標)

まず、組織のゴールを明らかにします。組織のゴールとはビジョン、ミッションと言い換えられるでしょう。自分が所属する企業や組織はどこに向かっているのかをしっかりと理解することにより、メンバー個人が同じ方向性を向いて進むことができます。 そのため、ゴールは全員の共通認識が合致するようできるだけわかりやすい言葉で表現することが大切です。

B)Role(役割)

自律型組織においては、誰が何の役割を果たすのか明確にすることが重要です。役割が明確になれば、その役割を果たすために、私はいま何をなすべきなのかを自分自身でしっかりと考えることができます。
その際に必要なのは責任と権限もあわせて付与することが大切です。なぜなら、責任は期待にもなりますので、人間は人からかけられた期待に応えようとする心理状態が働きますので、その期待に応えられるだけの権限も持ち合わせていると成果を出すために、一生懸命自分自身で思考することができます。

C)Process(仕事の進め方)

自律型組織における仕事の進め方は、トライアンドエラーです。早く成果を出すためには小さくても良いので実行してみることが大切です。実行してみて仮説検証を繰り返すプロセスが大切です。
そして、もう一つ大事なことは、心理的安全な職場環境を作ることです。心理的安全な職場環境がなければ、一つの失敗を恐れてしまい、失敗しないように緻密な計画を立てることばかりに目がいってしまうようになります。そうすると机上の計算に時間を費やしてしまい、行動のスピードが落ちてしまいます。また、個人が失敗を恐れてしまうと、自分自身の責任で失敗したくないので、誰かの指示を仰ごうという指示待ちになりがちです。心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態を指します。1999年エドモンドソン氏が提唱した概念です。
このように自律型組織には、チャレンジを奨励する心理的安全性が確保された組織風土が大切になります。

D)Interpersonal relationship(関係性)

自律型組織において、組織内で働くメンバー同士の関係性はとても重要であり、心理的安全性が保たれていることが重要です。

あらためて心理的安全性について解説します。「心理的安全な状態」とは4つの不安がない状態を指します。

  • 無知だと思われる不安
  • 無能だと思われる不安
  • 邪魔をしていると思われる不安
  • ネガティブだと思われる不安

とくに、自律型組織においては、素早く自分の意思決定において行動するので、失敗することも多々あるでしょう。その際に、周囲から無知や無能と思われることなく、チャレンジしたことに対して賞賛される組織文化があることが重要です。

7.自律型組織を育む鍵は「対話」

ここまで自律型組織の作り方について解説してきましたが、それ以外に大切な要素である「対話」についても解説しておきます。 心理的安全な組織を作るために対話は必要不可欠です。進んで発信することに苦手意識があるメンバーにも発言の機会を与えて、この組織においてはどんなことでも発言しても受け入れてくれるという体験がなければ、本当に必要なときに発言することは困難です。そして対話で気をつけたいことは、善し悪しを判断しないことが重要です。

優秀な管理職の皆様であれば、つい判断のジャッジメントをしたくなると思いますが、そうではなく、勇気を持って発言をしてくれた姿勢を、まずは認めることに焦点を当てましょう。

8.まとめ

今回は自律型組織について解説してきました。自律型組織は社会の変化に素早く対応することができる良さがあり、従業員のエンゲージメントや多様な働き方にも対応できるとても良い組織のあり方といえます。
ただし、すべての組織においてこの形が適応できるものではありませんので、皆様の会社組織において、どの組織であれば、自律型組織が最も良い効果を発揮できるのか、これを機に見直されてみてはいかがでしょうか。

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