コラム

企業の人材育成に欠かせないeラーニング 発展の経緯と今後

ITが浸透した現代、多くの社員がイントラネットやインターネットを使い、パソコンやスマホ、タブレットなどの端末を業務で使うことが当たり前となりました。そのなかで、企業がeラーニングを研修に取り入れることは珍しくなくなっています。eラーニングでの研修を受けたことがある人も多いのではないでしょうか。

eラーニングは、どのように始まり発展していったのでしょうか。歴史をひもときながら、現在eラーニングが、企業の人材育成にどのように取り入れられているのか、そして、今後の人材育成手法としてのニーズについて考えます。

eラーニングは90年代に始まり、インターネットとともに普及

eラーニング(electronic learning)という言葉が使われはじめたのは1990年後半といわれていますが、源流はそれ以前にあります。1960年に世界で初めて、コンピュータを利用した教育(CBT:Computer Based Trainingの略)プログラムが発表されました。その後、パソコンやインターネットの発展により、ウェブネットワークを利用した教育(WBT:Web Based Trainingの略)として広がっていきました。

日本では、2000年が「eラーニング元年」といわれており、2000年代に入ってから特に発展していきます。場所や時間を選ばず、パソコンやインターネットなどのインフラが整っていればローコストで実施が可能である等のメリットから、さまざまな学習の場で広がっていったのです。この流れのなかで、企業の人材育成ツールとしても取り入れられていき、現在では企業の人材育成ツールとして広く浸透しています。

企業の人材育成ツールとして定着しつつあるeラーニング

株式会社日本能率協会マネジメントセンターが2015年度に実施した「国内企業360社対象 e ラーニングに関する実施状況調査」によると、企業のeラーニングの導入率は80%。2013年度に実施された同調査の62.3%と比較すると、2年間で1.3倍に増加しているのです。

従業員規模別にみると、3000人以上の企業では90%以上、それ以下の企業でも70%以上の導入率となっており、多くの企業がeラーニングを人材育成の一環として導入していることがわかります。

eラーニングによる研修テーマの傾向とは

eラーニングを導入するテーマとして多く見られるのは、「階層や職務に関係なく必要とされるもの」です。また、グループワークのように集合研修を必要としない場合は、仕事のスケジュールを調整しながら個人で勉強する方が効率的であるため、導入されやすいといえるでしょう。

同調査によれば、最も多いテーマはコンプライアンスです。その次に、ビジネススキルおよびヒューマンスキル、情報セキュリティや個人情報保護、メンタルヘルスと続いています。

内定者教育や社内制度の周知といったその他のeラーニング活用事例

その他のeラーニング活用事例として、まず内定者教育としての活用があります。居住地やスケジュールの異なる内定者を一箇所に集めることなく、入社前に社員の人材育成を開始できるのは、eラーニングならではのメリットです。

また、社内の新しい制度等の周知、浸透を目的としたeラーニングの活用もあります。例えば、新しい人事制度を導入した際、マニュアルなどの配布だけでは社員が読まずに済ませてしまい、理解が進まないという場合があります。そこでeラーニングを導入して、社員の確認状況や理解度を把握するのです。修了していない社員にはリマインドのメールを送信することも可能なので、社員が目を通す状況を作り出すことができます。

スマホやタブレットは、今後のeラーニング導入を後押し

スマホやタブレットの普及により、営業職など移動時間の多い職種の社員が、すき間時間を活用してeラーニングに取り組めるようになりました。前出の調査では、eラーニングの導入理由に「スマホやタブレットでの受講が可能」である点を挙げた企業は、2015年度で25.3%となっています。これは、2013年度の7.5%と比べると3倍以上の増加です。

また、総務省の発行する「平成28年度 情報通信白書」によれば、スマホとタブレットの普及率は上昇し続けており、今後もスマホやタブレットでの利用を念頭に置いて、eラーニングを導入する企業が増加すると予測できます。

今後は営業職のみならず、働き方改革のなかで、在宅での勤務やオフィス以外での勤務も広がっていくと考えられます。場所や時間にとらわれない企業の人材育成の一環として、eラーニングのニーズや重要性は、ますます高まっていくといえるでしょう。