コラム

リーダーの育成方法
~マネージャーの延長線上にリーダーがいるという誤解

1.今の時代に求められる「リーダー」の役割とは

リーダーとは、リーダーとは組織をけん引や先導していく存在です。リーダーシップの発揮の仕方にはいくつかタイプが分かれますが、今の時代に求められるリーダーはどのような存在なのでしょうか。1995年から1973年は高度成長期として日本経済が年平均10%の成長を遂げていました。しかし、今はVUCAと呼ばれる先が見通しづらい時代と言われています。そのようななかで組織をけん引ししていくリーダーとはどのような役割が求められるのでしょうか。

1)リーダーに求められる役割

企業や組織の成熟度や事業環境の違いにより、求められるリーダー像は異なると考えられます。例えば、企業の状況を表す言葉として成長期、成熟期、変革期という長期的な表現もありますし、有事と平時というように短期的な表現もできます。
成長期・変革期もしくは短期的にみた有事の際には自らが先頭に立つ強いリーダーシップの発揮が求められます。一方、成熟期や平時においては、組織を後ろから支えるフォロワー型のリーダーシップが効果的とされています。
どのような環境においても、リーダーの役割は組織の成果を最大化させるために、影響力を発揮することです。

2)リーダーとマネージャーの違い

リーダーと類似されるマネージャーという存在があります。どのような違いがあるのでしょうか。最も大きな違いは、リーダーは非公式な存在であるのに対して、マネージャーは公式的な立場であるという事です。非公式な立場なので、昨日入社したばかりの新入社員だとしてもリーダーになれるのです。

どのようにすれば周囲の人(フォロワー)がリーダーとして認知するようになるのでしょうか。リーダーとして認知されるためには、リーダー自身に成し遂げたい強い想いがあり、それが組織に対して感情的側面に影響を与えていることが必要です。
マネージャーは、組織目標を達成するために、チーム一丸で目標を達成しようと共同関係にあり、公式な立場で権限を与えられ、自ら判断できることがやりがいにつながります。ただし、経営資源をいかに効率的・効果的に活用するかという、視点が内向きになりがちです。
一方、リーダーが行う行動は、変化を求め革新的にリスクを冒しながら組織を成長に導いていくため、視点は外向きといえるでしょう。

2.リーダー育成の課題

それでは、リーダーをどのように育てていけば良いのでしょうか。リーダー育成の課題について解説します。

1)自社に求められるリーダー像が不明確

企業の状況に応じて求められるリーダー像は異なります。いま現在、会社や組織がどのようなリーダーを求めているか、検討することが重要です。
業績指標を用いて売り上げが伸び悩んでいるのか、新商品開発が思うように進んでいないのかという視点で状況を捉えることもできまし、離職率やモチベーションなどの人的な指標から組織の状態を捉えることもできます。
大切なことは企業のミッション・ビジョン・バリューや経営方針の内側から見る視点と、同業他社から見て我が社はどのようなポジションにいて何を強みとして勝ち残っていくか外側から見る視点の両面を考えることです。

2)マネージャーの延長線上にリーダーがいるという誤解


リーダーとマネージャーの違いを解説しましたが、マネージャーはこれまで成果を出した職種の中でマネージャーになることが一般的です。そのため、その分野における専門性を有しています。
マネージャーは経営資源をうまくやりくりすることで成果を出すことが求められる役割であり、業績における結果責任を伴います。そのため、部下に仕事を完遂させた経験を持たせたいと考えているものの、自分がやった方が早いと考えてしまい、残業規制の監督下において部下に仕事の経験させることができず、成長機会を奪ってしまっていることがあります。

マネージャーが成果を追求するために日夜奮闘している話はどの企業でもよく耳にしますが、部長の仕事が大変で困るという話はあまり耳にしません。その違いはどこからくるのでしょうか。管理監督する配下の社員の能力差によるものではないでしょうか。
例えばマネージャーが指揮監督するのは一般社員です。一般社員は能力も経験もバラバラで面倒見はとても手がかかります。一方、部長は社内で選考された優秀な社員がマネージャーに据えられており、手がかからない優秀なマネージャーを配下に持ちます。
そのため、マネージャーは業績責任を追求することに目が行きがちで、革新的なことを考える余裕がないことが推察されます。
このように、リーダーになるためには日常の業務から離れて、特別な教育を受ける必要がありますので、後ほど詳しく解説します。

3)リーダーのメリットを伝えきれていない。

これまでは経営者や人事担当者の目線でリーダー育成の課題を解説してきましたが、ここからは従業員から見たリーダーになるメリットはどこにあるのかを解説します。
リーダーは組織に対して大きな影響力を与えます。そのため、リーダーになると責任が増える、収入に見合わない、仕事よりもプライベートを充実させたいなどと感じている人はリーダーになることは困難だと言えます。組織を変革していくためには多大な労力を伴います。その労力を費やしてでも組織を変革したいという信念がなければ、リーダーとして組織を動かしていくことはできないでしょう。

3.リーダーを育成する方法

ここまではリーダーとマネージャーの違いや、リーダーが果たすべき役割について解説してきましたが、ここからはどのようにリーダーを育成していくかをみていきましょう。

1)リーダーを抜擢する基準を明確にする

リーダーはマネージャーの延長ではありませんので、リーダーに育成するために特別な育成プログラムが必要になります。 はじめにリーダーを抜擢する基準を明確にします。

基準として厚生労働省が提供する職業提供サイト(日本版O-NET)と呼ばれるものがあります。これは、仕事と従業員の特性に対してマッチング度合いを高めることで、より高い成果を出そうとするものです。 そのなかでリーダーに近い仕事として会社経営者を例にとり、リーダーとして求められる資質をみていきましょう。以下は、厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)会社経営者を一部抜粋したものになります。

会社経営者に求められる資質としては、論理的な思考、戦略的な思考が必要です。そして、自社のシーズからニーズに応える先見性や洞察力も経営は必要です。経済、社会、技術の全体像を把握し、将来を見通し、市場の変化に対応できる柔軟さや発想力も求められます。加えて、リスクに挑む決断力が必要となる場合もあります。
社内をまとめ、他社とも共同で事業を行うためには、共感力やコミュニケーション能力が求められます。会社経営者としても、広く社会のために会社を運営するという志も重要になります。
会社経営者になるものは、自らの人格を磨くことが重要であり、会社経営者としては仕事ができることも人格的に優れていることも必要です。人格は他の人には任せられない重要な要素であるため、人格を磨き続けることが非常に重要といえます。

引用:厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)会社経営者
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/514

あらためてリーダーは専門性を発揮することではありませんので、これまで優秀なプレイヤーから部下に仕事を任せて手放していくこと、そして部下が期待する成果を上げられるように後方サポートすることが求められます。まずは、自らの専門的な仕事に割く時間を減らしたうえで、リーダーとして果たすべき役割を発揮していくことが求められます。

2)リーダー育成プログラムを構築する。

育成方法は様々ありますが、一般的な手順は以下となります。

リーダー育成プログラムを作成する

リーダーの抜擢基準と連動させた、リーダーとして必要な能力を身につけるための特別プログラムを作成します。
例えば、経営を学ぶために海外のMBAに留学させたり、他社の職場を実際に経験するための他社留学を行ったり、子会社の経営そのものを任せることも効果的です。大切なことは実際の現場でどれだけ質の高い意思決定を行ったかという経験が、その後のリーダーシップの発揮において重要になります。
何をさせるかという手段が先行せず、リーダーとしてどのような力を身につけさせたいのか、そのためにはどのような経験や知識が必要になるのかを考えたうえで設計することがとても重要です。

リーダー候補者リストを作成する

マネージャーになった時点から、リーダー候補を選抜することが理想です。あくまで候補なので、自由に候補者名簿には自由に出入りできるように入れ替えられることが大切です。なぜなら、リーダー候補者になれなかった人のモチベーションを下げないようにすることと、どのような課題を克服できればリーダー候補になり得るのか、自己研鑽で能力開発することが可能になるからです。
リーダー候補者のリストは秘匿化すべきか否かという議論がありますが、企業風土により一概にどちらが良いとは言えません。
ただし、大切なことはリーダー候補に自覚を持たせることと、リーダー候補者は常に見直しがされていて、いつでも一定基準をクリアすれば何度でもチャレンジできるという透明性を持たせて候補者のモチベーションを下げないことが重要です。

3)リーダーのロールモデルを作る

リーダーになることが心理的な負担にならずモチベーションにつながるためには、リーダーのロールモデルをつくることが重要です。ロールモデルを作るためには、適切な選考を行っている前提のうえで、部下から尊敬されていたり、一目置かれていたり、業務量の多い方をリーダー候補として公表することで、私も後に続きたいとロールモデルとしての存在感を発揮することができます。

4.リーダーを育成するときのポイント

1) 候補を現場から離す

リーダー育成プログラムのなかでも解説しましたが、リーダー候補と現場の業務をできるだけ切り離すことは有効です。なぜなら、リーダー候補者が様々な知識や経験を取り入れたとしても、翌日日常業務に戻り、学んでいることと現実のギャップを感じてしまっては学びの効果が少なくなってしまいます。そのために、リーダー育成プログラム中は日常業務から離れる環境を整えることが大切です。

2)1on1ミーティングを実施

部長からマネジャー、マネジャーと一般社員の上から下への1on1ミーティングに取り組まれている企業は多いですが、リーダー候補と社外コーチによる1on1ミーティングが効果的です。社外コーチはあくまで理想なので、組織図上の上下関係にない斜め上の役職者や人事がコーチを務めても良いでしょう。
1on1ミーティングの目的は、リーダー候補者がリーダーとしての経験を積んでいく過程において、どのようなことが妨げになっているのかを明確にし、定期的に振り返りながら個々の課題解決と能力開発を促進することが目的です。

3)リーダー育成のための集合研修を実施

リーダー育成プログラムで解説した内容は一人ひとりにあわせたプログラムになるので、とても効果は高いですが、その分費用がかかります。
しかし、集合研修であれば大人数を短期間のなかで一定水準以上に育成することが可能です。集合研修の一例ですが、全体を通して1年間程度の時間を費やし、個別に1ヶ月ごとに様々な知識を習得するための集合研修を行い、集合研修のインターバル期間に職場実践を行うことが多くあります。
目的はリーダーに必要な知識を得ることと実践を通じて気づきを得ることです。

求められるリーダー像により研修内容は異なりますが、代表的な育成ニーズが以下の通りです。

  • 経営幹部として財務や会計などを一定水準に学ばせたい
  • ビジネスアイデアの発想法を取得させたい
  • 模擬的な意思決定の経験を積ませたい
  • 実際にある会社の経営改善を経験させたい
  • 数年後の自社のビジョンを描き、それに対する問題を解決していきたい
  • 外国籍や多様な人材との異文化コミュニケーションが取れるようにしたい

4)リーダー育成のPDCAを回す

何事にもPDCAの効果検証は重要です。そのためには、Planを立てる段階において具体的な数値目標を設定しておき、それを達成したかどうか、達成しなかった場合には課程の行動が足りなかったのか、それとも目標の置き方自体が見直す必要があるか。一度決めてしまった目標だから変えられないということが無いように定期的な効果検証が有効です。

5.まとめ

今回はリーダー育成について解説してきました。リーダーとは組織を変革していくために、影響力を与え続けることですが、皆様の企業ではどのようなリーダーが求められているのでしょうか。これを機会に求められる貴社で求められるリーダー像や育成の全体像を見直されてみてはいかがでしょうか。

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