コラム

繰り返される新入社員の「タイプ化」 その歴史と今後について

日本のビジネス社会は、新卒一括採用が前提となっています。また毎年、日本生産性本部が発表する新入社員の「タイプ名」が話題となっており、それに基づいて「〇〇タイプ」といったように、新入社員をひとくくりに「タイプ化」しようとする独特の慣習が続いています。
新卒一括採用という慣習は、海外のビジネスパーソンにとってどのように見えるのか、また「タイプ化」の歴史や世代間の差を埋めるために必要なことについて見ていきます。

繰り返される「タイプ化」の歴史

「今時の若いモンは」。この言葉はいつの時代でもオフィスにおける笑い話の典型です。「オフィスあるある」として取り上げられることも多いですよね。

そして今の20代の若者は、何かといえば「ゆとり世代だから」と揶揄(やゆ)されています。実はこのような若い世代を指す言葉はこれまでにも多数あり、その時々で同じような扱いをされてきたのです。
社会人としてベテランの領域である50代は、かつて「新人類世代」と呼ばれていました。彼らも新入社員だったころには、「一体何を考えているのかわからない」と異端児扱いされていたものでした。

そのほかにも「バブル世代」や「就職氷河期世代」といった言葉があり、新入社員が入社するたび「再生紙型」「テレフォンカード型」などと新卒者のタイプ化もなされてきたのです。

ニューヨークの若きビジネスパーソンは日本の慣習をどう感じるか

毎年の新入社員のタイプ化は、日本のビジネス社会が「新卒者の一括採用」という独特の慣習を持つことに起因します。日本と違い、欧米の企業では必要なときに必要な人材を随時確保していくのが一般的で、未経験の新卒者や在学中の学生などはインターンを経たうえで適性を見極めて採用を行います。

年齢やそれまでの経験、専門分野の知識、ましてや国籍までもが多岐にわたるということがごく当たり前のニューヨーク。この街で働く若手ビジネスパーソンは、この日本独特の「新卒一括採用」をどう感じるのでしょう。何人かにインタビューを行いました。

  • 「何の経験もない人員を多数雇用するというのは、企業にとっては大きな負担ではないのですか? そして経験を積んで有能な従業員となったらすぐにほかの会社に移るので、二重の損失ではないでしょうか」
  • 「新卒者を企業がトレーニングしてくれるのは良い制度かもしれません。しかし本人の経験のある部署や希望部署に配置するのではなく、会社側が勝手に人材を配置するというのは企業にとっても大きな損失だと思います。すぐに辞める人が多くなるだけではないのですか」

このように、ニューヨークのビジネスパーソンは、日本のビジネス慣習に違和感を覚えるようです。

世代間の差を埋めるために必要な「理解と心構え」

一体なぜ、毎年のように「若い社員と、その言動をぼやく先輩社員」という構図が生まれているのでしょうか。そこには大きな変化を続け、多様化する一方の社会背景があるようです。
例えば「ゆとり世代」ですが、その中でも上の世代はもうすぐ30代になります。そしてその上司は40代~50代で「新人類世代」や「バブル世代」にあたります。「新人類世代」「バブル世代」ともにバブル期を経験し、景気拡大の中で社会人生活を始めたのに比べ、「ゆとり世代」は長く続いた景気低迷がもたらした厳しい状況の中で社会人になりました。

環境の違いから、「新人類」や「バブル世代」の多くは、正規雇用の機会さえ得られない就職氷河期のような状況を理解しにくいのではないかといわれています。彼らが身につけてきた思考が、新入社員となる現在の若者らと相違があっても決して不思議ではありません。そのような二つの世代が双方を理解し合うということは難しいと考えられます。
ですから、新入社員を迎える側としては、世代間の価値観の違いを十分理解し、そのうえで、自分たちとは大きく違う世代の若者たちを新入社員として迎えるのだという心構えが必要になるでしょう。

以上のように、世代別のタイプ化は、相手を理解するヒントにもなります。同じ世代のすべての人が同じ「タイプ」の特徴に該当するわけではありませんが、傾向として活用することは可能です。

「タイプ化」とうまく付き合おう

毎年、新入社員のタイプ名を決定している日本生産性本部によると、2017年度の新入社員のタイプは「キャラクター捕獲ゲーム型」なのだそうです。スマホを片手にネットやSNSを駆使して情報収集し、熱しやすく冷めやすいといった特徴もまとめられています。

先述の通り「新人類世代」は各企業や組織で役職につく年代に達しています。自分たちと価値観が大きく異なる若者に対して、時に納得がいかない言動もあるかと思います。ただし、そこは自分たちとは全く異なる「タイプ」の社会人なのだという理解が必要でしょう。その理解の手助けとなるのが「タイプ化」「タイプ名」なのです。

「タイプ化」は、若者をひとくくりにして否定するためではなく、理解するための前向きな使い方をしたいものですね。