eラーニングを導入するには?事前の確認事項と費用相場、成功のポイント
eラーニングとは、インターネットを利用した学習形態のことです。対面での集合研修とは異なり、場所や日時を問わずに受講できるのが特徴です。「受講者の学習状況を把握しやすい」「スケジュール調整しやすい」といったメリットがあります。
インターネットを利用してオンライン学習ができるシステムを「eラーニングシステム」と呼びます。企業がeラーニングを導入する際は、適切なシステムを選ぶことが大切です。この記事では、eラーニング導入を検討中の企業さまに向けて、導入前に知っておきたいポイントや費用相場、導入の流れ、成功のコツなどをご紹介します。
『eラーニングと人的資本価値向上』に関する企業の意識調査
従業員数1000名以上の大手企業の人事・総務担当を対象に、企業のeラーニング活用の実態や課題、また人的資本の開示に対する認識や取り組み状況について調査したレポートをダウンロードいただけます。
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eラーニングを導入する前に確認したいポイント
eラーニングを運用するにあたり、どのような点に気をつけたらよいかわからない方も多いのではないでしょうか。ここでは、導入前に確認しておきたいポイントを解説します。
eラーニングの利用目的を明確にする
eラーニングの導入に際して、最初に決めておきたいのが利用目的です。目的が曖昧なままでは効果的な研修を実施できず、費用や手間をかけただけで成果を得られない可能性があります。何のためにeラーニングを取り入れ、最終的にどういった目標の達成につなげたいのかを明確に定めましょう。 eラーニングの利用目的を考える際は、現状の問題点や課題点を軸に検討を進めるのがポイントです。たとえば、現状の経営課題として離職率の高さが問題視されている場合、人材の定着に必要な施策を実施する必要があると考えられます。そこからどのようなeラーニング教材を導入すればよいか見極めましょう。
eラーニングの受講対象者を明確にする
導入目的を明確にした後は、受講対象者を定めましょう。たとえば、eラーニングの対象が新入社員か管理職かによって適切な研修内容が変わってきます。対象となる従業員の属性を考慮し、必要なコンテンツを明確化しましょう。
コンテンツの調達方法を検討する
eラーニングコンテンツは、調達方法によってそれぞれ異なる特徴があるため、比較した上で自社に合うものを選びましょう。
既製のeラーニング教材を購入するタイプ
eラーニングシステムのベンダーが制作・販売しているコンテンツをそのまま導入する方法です。ライセンス販売の形式が採用されているケースが多く見られます。ビジネスの現場で求められる知識を幅広く学べる汎用性の高い教材もあれば、特定の業務や分野に特化した専門性の高い教材もあります。
既製のeラーニング教材をカスタマイズするタイプ
既製の教材コンテンツが自社にフィットしない場合、カスタマイズする方法もあります。たとえば、「教材で紹介される具体的な事例を自社と関連する内容に置き換える」「不要な部分はカットする」などのカスタマイズで、より効果的な社内教育を実現できるでしょう。
eラーニングのコンテンツをオーダーメイドするタイプ
eラーニングシステムの提供会社に発注し、自社の目的に則したコンテンツを制作してもらう方法があります。完成までの時間がかかる上、コスト負担も大きくなりますが、自社にとって最適な内容を用意できる点が魅力です。
コンテンツを自社で作成するタイプ
eラーニングの教材作成ツールなどを活用し、教材を内製する方法もあります。社内のリソースを割く必要がありますが、企業の状況に合わせてコンテンツの内容を調整しやすいというメリットがあります。
利用方法や端末を確認する
eラーニングシステムを利用するためにはインターネット環境が必要なほか、パソコンやタブレット、スマートフォンなどのデバイスが求められます。確認の上、必要に応じて整備しましょう。また、eラーニングシステムには「クラウド型」「オンプレミス型」「スクラッチ開発型」などの種類があります。自社にとって適切な方法を選定しましょう。
クラウド型はインターネットを通してeラーニングコンテンツを利用できるタイプです。eラーニングでは「LMS(Learning Management System)」と呼ばれる学習管理システムを利用するケースが主流とされます。クラウド型の場合、ベンダーの構築したLMSプラットフォームにアクセスして教材を活用します。ベンダー側がシステムアップデートやメンテナンスを行うため、企業側は管理の手間がかからない点がメリットです。 オンプレミス型は、自社内にサーバーを設置してLMSを利用する点が異なります。メンテナンスや管理などは企業側が実施する必要があります。その一方で、データの漏洩や不正アクセスなどを防ぎやすい点がメリットです。
スクラッチ開発型は、自社でシステム開発を実施し、eラーニングコンテンツを導入するタイプです。自社で全システムを開発する「フルスクラッチ」や、既存のパッケージに手を加える「ハーフスクラッチ」などの種類に分けられます。開発にかかる予算や人的リソースの考慮が必要ですが、柔軟にカスタマイズできる点が魅力です。
運用体制を考慮する
eラーニングの導入に際して、運用やシステム管理などの体制整備が求められます。効果的な運用を実現する仕組みを構築しましょう。スムーズな導入を目指すため、担当者を決めてチームを組むことも選択肢のひとつです。また、円滑な運用のためにはeラーニングのベンダーによるフォローの有無も重要となります。サービスを選ぶ際は、ベンダーのサポート体制もチェックしておきましょう。
eラーニングの活用方法をイメージする
学習履歴はeラーニング施策における貴重なデータとなります。自社の課題解決に活かす方法をイメージしておくとよいでしょう。eラーニングで使用するLMSでは、学習者ごとに学習履歴が保存されるため、管理職は従業員の進捗状況やテスト結果などを把握できます。学習内容の理解度や習熟度を見て、現時点での能力を確認することが可能です。さらなるステップアップを実現するために、必要な学習コンテンツの提供につなげられるでしょう。ほかにも、eラーニング教育施策の効果検証や課題の洗い出しなどにデータを活用できます。
eラーニング導入の運用形態別の費用相場
ここまでご紹介した通り、eラーニングにはいくつかの運用形態があり、それぞれ特徴や費用が異なります。予算に応じて適切な選択ができるよう、費用相場を確認しておきましょう。
クラウド型eラーニング
クラウド型eラーニングでは、ベンダーと契約して利用料金を支払う形式がとられます。初期費用に加えて、選択したプランに応じた月額料金がかかるケースが多く見られます。月額費用の相場は5万円~20万円程度です。その他、追加オプション費用やカスタマイズ費用などが加算されることもあります。
オンプレミス型eラーニング
オンプレミス型eラーニングは自社のサーバー上にシステムを構築します。サーバーやネットワーク機器などにコストが生じるため、クラウド型と比較すると導入費用がかかりやすい方式といえます。費用相場は100万円~530万円程度です。
スクラッチ開発eラーニング
システム開発が必要なスクラッチ開発eラーニングは、人件費と開発期間で費用が変動しやすい特徴があります。費用相場はエンジニア1人あたり月額100万円程度です。開発期間が延びると費用総額も高くなります。
eラーニングの導入手順
eラーニングを導入する際は、以下のようなフローに従って準備を進めていくことがおすすめです。基本的な手順を見ていきましょう。
Step1.目的や運用方法について明確にする
最初の見出しで説明した通り、eラーニングの導入目的や対象者、運用方法などを明確に決めておくことが大切です。最終的なゴールをはっきりと定めることで、導入から活用までの道筋を描きやすくなります。
Step2.導入するeラーニングシステムを選ぶ
eラーニングシステムの情報収集を行い、自社に合うものを選定します。複数の候補に絞り込み、比較検討しましょう。主な比較ポイントは以下の通りです。
eラーニングシステムの比較ポイント
- 運用方法の違い
- コンテンツが自社に合っているか
- 独自コンテンツの制作機能の有無
- コストパフォーマンスは自社に合っているか
- 運用サポートの手厚さ など
システム導入にあたっては、運用方法や学習教材が自社に適しているか見極めることが重要です。ニーズを満たすコンテンツがない場合、独自コンテンツ制作機能のあるカスタマイズ性の高いものを選ぶとよいでしょう。また、予算に見合うサービスであるか、運用サポートは充実しているかといった項目もチェックが必要です。他社のクチコミや導入事例なども参考にしながら検討を進めましょう。
Step3.トライアルサービスがある場合は活用する
eラーニングシステムを使用するうちに、予期せぬ問題が生じるケースがあります。導入後はサービス変更が難しいため、事前にチェックできると理想的です。eラーニングシステムによっては無料トライアルを実施していることがあります。ぜひ活用して使用感を確かめておきましょう。
Step4.導入に向けて機器の準備や体制を整える
eラーニングシステムに必要な環境や機器が揃っていない場合は、不足しているものをリストアップして用意しておきます。導入後の学習環境も想定して準備を進めておきましょう。たとえば、リモートワークで従業員が自宅で受講する場合、端末の貸し出しや通信料の補助などを検討する必要があります。また、社内の運用体制も構築し、整備を進めましょう。
Step5.運用を開始する
準備が整ったら本格的に運用を始めます。実際に利用を開始すると、思いがけないトラブルが発生することもあります。ベンダーのサポートも活用しながら速やかに対応しましょう。また、運用するうちに可視化された問題を整理し、改善を目指すことが大切です。定期的に従業員の学習成果を確認するとともに、運用上の課題を把握する機会を設けましょう。
eラーニングの導入を成功させるポイント
eラーニングを取り入れる際は、以下のポイントを確かめておくと安心です。ここでは、eラーニングを導入する前に知っておきたい、成功のコツや注意点を解説します。
受講者が主体的に取り組める環境を整える
eラーニングを導入するメリットのひとつが、従業員の知識習得につながり、スキルアップを実現できることです。さらに、受講者それぞれが主体的に取り組むことで、学習効果が高まると期待できます。 主体的な学びを促すには、学習環境の整備をすべて個人に任せるのではなく、企業が支援することが大切です。自律学習を促進するための仕組みを作りましょう。社員研修の時間を取って学習機会を設けるのはもちろん、自主的に取組みやすい制度を用意することもおすすめです。 管理職は定期的な進捗確認やフィードバックを実施するとよいでしょう。評価を受ける機会が増えると、従業員のモチベーション維持にもつながります。
受講者が学びやすいeラーニングシステムを選ぶ
受講者の学習意欲を高めるためにも、使い勝手が良く学びやすいシステムを選ぶことが重要です。対応機器に制限はないか、操作性に問題はないかなどを確かめておきましょう。たとえば、利用可能な機器が限られるものより、マルチデバイス対応のシステムのほうが、スキマ時間を活用した学習につなげられます。導入前にトライアルを実施した上で、アンケートを取って学習者側の立場からの意見を募るのもおすすめです。
全社的に長期的な視点で取り組むようにする
eラーニング導入の施策は、企業の課題解決に役立ちます。eラーニングシステムを選ぶときは、将来的な発展の可能性を考慮し、長期的な視点で導入することがおすすめです。経営陣を筆頭に、組織全体でeラーニング運用に取組みましょう。 eラーニングシステムの中には、拡張性や柔軟性を兼ね備えたサービスが多くなっています。企業の経営環境や到達目標が変化した際は、カリキュラムを柔軟に変更し、ニーズに適した学習が可能です。これにより、全社的な課題の解決や成長につなげられます。
自社に必要な機能を精査する
eラーニングシステムによって搭載されている機能が異なるため、事前に確認して比較しましょう。たとえば、基本的な受講機能や管理機能に加えて、チャットや掲示板などを利用できるコミュニティ機能が付いているサービスがあります。ほかにも、リアルタイムでの動画配信に対応しているサービスや、VR視聴が可能なサービスも見られます。 ただし、多彩な機能を備えたシステムを導入しても、使わない機能が多ければ効果を期待しにくいでしょう。また、機能によっては利用機器に相応のスペックが求められることがあります。自社にとって本当に必要な機能を精査した上でサービスを選びましょう。
ユーザー数に合わせたシステムを選ぶ
一般的にeラーニングシステムを利用する際は、ユーザー1人につき1つのIDを登録して受講します。多くの従業員による利用を想定している場合、登録可能な人数や同時接続可能な人数が多いサービスを選んだほうがよいでしょう。ユーザー数に応じて利用できるプランが変わるケースもあるため、料金体系の確認も必要です。
セキュリティ機能を確認する
eラーニングを行う上で欠かせないのがセキュリティ対策です。たとえば、ユーザー登録時に入力した個人情報が流出すると、従業員に被害が生じるおそれがあります。ほかにも、講義内容をカスタマイズして自社のノウハウや製品に関するデータを取り入れている場合、動画教材などの流出による影響が大きくなってしまう可能性もあります。セキュリティ体制を確認し、情報漏洩を防ぐことも重要です。
eラーニングの導入で自社の経営課題を解決しましょう
eラーニングを有効活用すると、企業の抱える問題を改善に導くことができます。そのためには自社に適したeラーニングの方式を選ぶとともに、運用体制を整備することが重要です。さらに、従業員それぞれが能動的に学びやすい環境を整えることや、運用中に発見した問題を放置せず改善を重ねることも大切です。eラーニングの導入を成功させるために、十分な準備を行った上で運用を開始しましょう。
また、eラーニングの導入を検討中なら、ぜひNTT HumanEXへご相談ください。NTT HumanEXでは、幅広い分野から課題内容に応じて選べるeラーニングコンテンツを提供しています。サポート体制が充実しているため、eラーニング導入が初めての場合も安心です。サービス詳細については、どうぞお気軽にお問い合わせください。