オンライン研修とeラーニングの違いは?それぞれのメリットと選び方
自社の人材育成の目標を達成するためには、どのような研修形態が適しているのでしょうか。従来の社員研修では、オフラインで対面にて実施する「集合研修」や「OJT」などの形態が主流でした。近年はこれらに加えて、「オンライン研修」や「eラーニング」などの選択肢があります。人材育成の目的や課題に適した形態を選んで、社員研修をより効果的に実施しましょう。
本記事では、研修形態の一つである「オンライン研修」と「eラーニング」の違いについて解説します。また、それぞれのメリット・デメリットや、適切な研修形態の選び方についてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
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オンライン研修とeラーニングはどう違う?
初めに、オンライン研修とeラーニングに関する基礎知識をご紹介します。オンライン研修とeラーニングの特徴や、それぞれの違いについて改めて確認してみましょう。
オンライン研修とは?
オンライン研修とは、インターネット回線を利用してデジタル機器を通じて受講する研修形態を指します。主流なのは「リアルタイム配信型」で、ビデオ会議ツールを用いて講師と受講者がリアルタイムで対話しながら学習するのが大きな特徴です。従来の研修形態と同様に、講師と受講者が同時かつ双方向のコミュニケーションを取りながら講義が進みますが、オンライン参加のため受講場所の自由度が高まります。こうしたリアルタイム配信型のオンライン研修は、「Webセミナー」や「ウェビナー」と呼ばれることもあります。その一方で、あらかじめ録画された動画をオンライン上で視聴する形態のことを、オンライン研修のオンデマンド型として扱う場合もあるため押さえておきましょう。
eラーニングとは?
eラーニングとは、“電子的な学習”を意味します。インターネット回線とデジタル機器のほか、「学習管理システム(LMS)」と呼ばれる専用システムを用いて受講するのが一般的です。LMSには、学習コンテンツを作成・配信する機能や、学習の進捗状況を確認する機能、受講履歴や成績を管理する機能、フィードバックの機能などが搭載されています。学習コンテンツの種類は、テキストベースのコンテンツ、アニメーションのコンテンツ、動画コンテンツなど多様で、研修内容に応じた使い分けや組み合わせが可能です。また、学習コンテンツは自社で作成するだけでなく、eラーニングサービス側から提供される高品質なコンテンツを利用することもできます。
オンライン研修とeラーニングの違い
オンライン研修とeラーニングは、どちらもインターネット回線とデジタル機器を利用して受講する点で共通しています。一方、オンライン研修にはリアルタイム配信型があり、講師と受講者が同時かつ双方向のコミュニケーションを行う点が主な違いだといえるでしょう。
オンライン研修とeラーニングの両者に共通するメリットは、インターネット環境とPC・タブレット・スマートフォンなどのデバイスがあれば、場所を問わずに研修を受講できることです。研修のオンライン化によって研修会場の手配にかかる費用と手間、従業員の移動にかかる交通費などを削減できます。また、テレワーク(リモートワーク)で勤務する従業員のスキルアップにも役立てられます。
オンライン研修とeラーニングに共通するデメリットとして挙げられるのは、通信環境の確保が必須となることです。万が一通信トラブルが発生すると、研修の受講が中断されたり遅延したりするおそれがあります。また、実技や体験が重要となる一部の研修内容では、集合研修やOJTなど従来の研修形態のほうが学習に適している場合があります。
オンライン研修のメリット・デメリット
ここでは、オンライン研修のメリット・デメリットを解説します。なお、以降の本文における「オンライン研修」という用語は、講師と受講者が同時かつ双方向のコミュニケーションを取りながら学習する「リアルタイム配信型」のことを指します。後述するeラーニングと比較検討してみましょう。
オンライン研修のメリット
講師が受講者の反応や理解度をリアルタイムで確認できる
オンライン研修は双方向型なので、講師が受講者の表情や反応を見ながら授業を進められます。理解度に応じて説明を補足したり、講義の進行を調整したり、柔軟な対応が期待できます。リアルタイムならではのサポートによって、受講者にとって学びやすい環境をつくれるのがメリットです。
質疑応答やディスカッションを通じた双方向コミュニケーションが可能になる
オンライン研修では、講師や受講者同士が双方向コミュニケーションを活かして学ぶことが可能です。質疑応答の時間を設けたり、ディスカッションやグループワークを実施したりすることで、学びを深められます。また、参加者間で交流が促されることで、研修のモチベーション向上も期待できるでしょう。
講師の経験談や実例を通じて学びを深めやすい
オンライン研修では講師によるライブ感のある講義が可能です。講師の個人的な経験談や実例などを交えながら話すことで、受講者に学習内容に興味を持ってもらいやすくなります。また、具体性のある身近な話題によって、学んだことが印象に残りやすくなるのもメリットです。
ロールプレイングや実践的な活動を学習内容に含めやすい
オンライン研修は講義形式に限らず、ロールプレイングも実施できます。ロールプレイングでは、現場の顧客対応など特定の場面を想定した疑似体験によって、対応力を身につけることが可能です。実践的なノウハウを学ぶ研修内容に適しています。
オンライン研修のデメリット
機材(Webカメラやマイクなど)の準備が必要
リアルタイム配信型のオンライン研修では、ビデオ会議ツールでコミュニケーションを取るために、受講者全員分のWebカメラやマイクなどの機材を用意しなければなりません。場合によっては機材費がかさむ可能性があります。
受講者のスケジュール調整が必要
リアルタイム配信型のオンライン研修は日時を指定して実施されます。研修準備では講師と受講者全員のスケジュール調整が必要となるため、研修を手配する人事部門の業務負担が生じます。
受講者の積極性の違いにより学習効果に差が出やすい
研修会場で実施する集合研修と比較すると、オンライン研修では積極性の低い受講者の発言が少なくなるなど、学習効果に差が出やすいといえます。全員の積極的な参加を促す工夫が必要です。
eラーニングのメリット・デメリット
続いて、eラーニングのメリット・デメリットを解説します。社内研修へeラーニングの導入を検討されている企業の研修ご担当者様は、eラーニングならではの強みを確認してみましょう。
eラーニングのメリット
学習内容や教材を簡単に修正・アップデートできる
eラーニングではLMSを活用して学習コンテンツやカリキュラムを簡単に修正・アップデートできます。常に最新の情報を学習者へ提供できるのがメリットです。システム上で変更内容を一斉に反映できるため、研修資料の管理を効率化できます。
受講者が自分の都合に合わせて学習できる
eラーニングは時間と場所の自由度が高い学習方法です。いつでもどこでも気軽にオンライン学習が可能なため、通常業務で多忙な従業員も自分のペースで勉強を進められます。短時間の学習コンテンツなら、スキマ時間を活用してこまめに受講することが可能です。
同じ教材を繰り返し視聴できる
eラーニングの学習コンテンツは一定の期間内に視聴し放題となるので、受講者は自分の理解度に応じて繰り返し学習することが可能です。苦手な分野を重点的に学んでスキルの定着を図ったり、テストで間違った分野を復習したりできます。
学習データの蓄積や進捗状況を可視化できる
eラーニングのLMSには個人の学習履歴や学習状況などのデータが蓄積される仕組みとなっています。管理者や人事担当者は、受講者の進捗やテスト結果などをチェックすることが可能です。進捗が遅れていたり、テストの点数が基準に達していなかったりする場合、対象者を適切にフォローできます。
大人数の受講者に対して均一の教育を提供できる
eラーニングは、多数のスタッフが在籍する企業や、全国に拠点がある企業向けの研修方法として注目されています。例えば全国展開するチェーン店のような、大人数の受講者に均一の教育を行う必要がある企業の社員研修に適しています。
テスト結果を即座に把握・フィードバックしやすい
eラーニングのLMSに搭載された管理機能を活用すれば、受講者のテスト結果のデータをその場で共有したり、点数に応じたフィードバックを自動で実施したりすることが可能です。プラットフォームの機能を活用することで、フィードバックの充実化を図れます。
eラーニングのデメリット
即時の質疑応答ができない
eラーニングは、リアルタイムで講師と対話する研修形態ではないため、質疑応答へ即座に対応できない場合が多いといえます。受講者が疑問を解決するまでにタイムラグが生じるのが注意点です。
学習意欲の維持が受講者自身に依存する
eラーニングの学び方は自主学習であり、強制力がありません。そのため、自身でモチベーションを管理して自主的に学習を進めることが苦手な受講者には適していない可能性があります。
受講者間の交流やコミュニケーションが難しい
eラーニングは個人で受講するので、講師や受講者同士の交流が発生しません。他者とのコミュニケーションが重要となる研修内容には向かないといえます。
専用システムの導入やコンテンツの制作には初期投資が必要になる
eラーニングを実施するためにLMSを導入する場合は、システムの初期費用や月額料金が発生します。また、学習コンテンツ制作を内製する工数や、制作を外注する費用などが発生する点にも留意しましょう。
オンライン研修とeラーニングで迷ったときの選び方
オンライン研修とeラーニングには、それぞれメリット・デメリットがあるため、自社の目的や受講者の特性に応じて適切な形式を選定することが大切です。場合によっては、両者を組み合わせるハイブリッド形式によって効果的な研修を実現できるでしょう。ここでは、自社に適した研修形態の選び方を解説します。
オンライン研修が向いているケースの例
リアルタイム配信型のオンライン研修は、グループでのやり取りや意見交換が必要な「チームビルディング研修」や「組織活性化研修」などに適しています。このほかに、社員教育の一環で実施する新製品の説明会などにも向いている手法です。リアルタイムでのコミュニケーションや質疑応答によって、受講者の理解度を高めることが可能です。また、「営業スキル研修」「コミュニケーション研修」「クレーム対応研修」「部下育成研修」のように、ロールプレイングが中心となる研修にも向いています。
eラーニングが向いているケースの例
eラーニングは、反復学習が必要な場面や、受講者が主体的にスキルアップをめざす場面に効果的な学習スタイルです。例えば、インプットが重要となる資格試験対策のほか、特定のビジネススキルの習得などに適しています。また、業務の基礎知識や共通認識を大人数へ一斉に浸透させる場面でも役立てられる手法です。具体的な活用方法として、全社員や全拠点を対象に実施する基礎的な研修が挙げられます。その際は、LMSを利用すれば研修の進捗や成果をデータで一元管理することが可能です。
オンライン研修やeラーニングの効果を高めるポイント
オンライン研修やeラーニングの効果を最大化するには、導入時に以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。研修効果を向上させるために、ぜひ参考にしてみてください。
目的を明確にして事前に説明する
社内で研修のオンライン化を推進する際は、自社の目的や達成すべきゴールを設定し、社内へ共有することがポイントです。受講者に研修の重要性を理解させることで、自身が身につけるべきスキルを把握し、学習のモチベーションを高められます。また、事前に受講者へデジタル機器やLMSの操作方法を説明して、スムーズに受講をスタートできるようにサポートすることも大切です。
実践的な要素を組み込む
オンライン研修やeラーニングで学んだことを定着させて、受講者の自信を高めるために、実践的な要素を組み込むと良いでしょう。例えばオンライン研修の場合は、ロールプレイングやケーススタディを取り入れる方法が有効です。eラーニングの場合は、シミュレーションやクイズ形式のトレーニングを活用して、受講者のアウトプットを促しましょう。
定期的にフィードバックを行う
オンライン研修やeラーニングでは、受講者の理解度に応じたフィードバックを行うことが、学習のモチベーション向上につながります。オンライン研修の場合は、講師がその場でコメントを伝える時間を設けると良いでしょう。eラーニングの場合は、LMSの機能を活用して自動採点や点数に応じたコメント提示を行うことで、自動的にフィードバックを行うのも一つの手です。
受講者の積極的な参加を促す工夫をする
オンライン研修やeラーニングでは、講義形式で受け身になるのを避けるために、受講者が主体的に参加できる工夫を取り入れましょう。オンライン研修では、全員で行うディスカッションや、少人数でのブレイクアウトセッションが効果的です。eラーニングの場合は、受講者のアクションによって進行するストーリー形式の教材や、他の受講者とスコアを競うランキング形式によって、積極性を高める方法があります。
適切な学習時間の設定をする
オンライン研修やeラーニングの受講者が集中力を保つには、適切な学習時間を設定することがポイントです。オンライン研修では、集合研修と同様に定期的な休憩時間を挟むことが推奨されます。eラーニングでは、学習者の受講の負担を軽減するために、1コンテンツあたりの時間をできるだけ短くして内容を簡潔にまとめると良いでしょう。
オンライン研修とeラーニングの強みを活かして実施しましょう!
今回は、「オンライン研修」と「eラーニング」の違いや、メリット・デメリット、適切な研修形態の選び方などを解説しました。オンライン研修とeラーニングは、それぞれ異なる強みがあるため、自社の目的や受講者の特性に応じて使い分けることが重要となります。あるいは、両者を組み合わせた研修プログラムによって効果を最大化する方法もおすすめです。
NTT HumanEXでは、企業様のニーズに合わせて多彩な研修形態をカスタマイズしてご提供いたします。例えば、対面・オフラインで実施する「集合研修」、オンライン完結の「e-ラーニング」、オンライン・オフラインを組み合わせた「ハイブリッド研修」などさまざまな形態をご用意しています。また、研修内容は豊富な分野から貴社の課題に合わせて柔軟にお選びいただくことが可能です。社員研修の詳細は、NTT HumanEXまでお気軽にお問い合わせください。