コラム

終身雇用の崩壊と労働環境の変化に見る新たな人材育成の課題

かつては、定年まで働くことが一般的だった日本の雇用環境。しかし近年は、終身雇用の崩壊が叫ばれています。また、労働環境の変化により、人材不足や採用難などの新たな課題も浮上しているのです。労働環境の変化がもたらした新たな人材育成の課題と、その対応策について見ていきます。

終身雇用の崩壊による人材採用・育成の課題

平成28年10月に厚生労働省が発表した「新規学卒者の離職状況(平成25年3月卒業者の状況)」によると、高校卒業者で40%以上、大学卒業者で30%以上が入社3年以内に離職しています。これは、長期的視点での人材採用や育成が難しくなっていることを表しています。早期退職者の割合が高まることで、企業文化や業務知識、技能を熟知した人手も少なくなります。そのため、社内における人材育成の環境はますます厳しくなることが予想されるのです。

平成28年に独立行政法人労働政策研究・研修機構が調査した「人材(人手)不足の現状等に関する調査(企業調査)及び 働き方のあり方等に関する調査(労働者調査)結果」によれば、人材(人手)不足が何らかの影響をもたらした、と回答した企業は93.3%にのぼります。

また、人材不足がどのような影響を与えているかという質問に対して挙がったのは、「教育訓練や能力開発機会の減少」「従業員の労働意欲の低下」「離職の増加」など。今後の対策として約8割の企業が挙げたのは、「従業員の教育訓練・能力開発を強化すること」でした。

流動性と不足、今改めて人材について考える点

「離職率が高い」ということは「人材の流動性が高まっている」とも置き換えられます。そのため、従来の終身雇用モデルにおける新卒者の育成は、考え方を改める必要があるかもしれません。
また、雇用の流動性の高まりだけでなく、少子高齢化による人材不足も叫ばれています。その対策として、政府では「一億総活躍社会」などさまざまな働き方改革を進行。今後はさらに女性や高齢者の活躍が求められていくのではないでしょうか。

多様な働き方に応じた柔軟な人材育成が課題

働き手が多様になれば、それに伴って働き方も多様(主に時短、隔日勤務など勤務形態)になります。このような「多様な働き方」を前提とした人材の育成が新たな課題となるでしょう。

労働者に対する企業の育成方針について、厚生労働省の「平成26年版 労働経済の分析 -人材力の最大発揮に向けて- 第2章 第3節 人材育成の現状と課題」をひもときます。
いわゆる正社員の教育については「長期的な視点から、計画的に幅広い能力を習得させる」とする企業が5割を超えています。それに対し、所定労働時間が短い者や職種や勤務地などが限定されている正社員には、「業務の必要に応じてその都度、能力を習得させる」「長期的な視点から、計画的に特定の能力を習得させる」といった「的を絞った取り組みとする」という回答が多く見られました。

多様な働き方、多様な育成ニーズに対応するためには、画一的な集合研修では対応しきれない部分も出てくるでしょう。今後は、昨今普及が進む「eラーニング」のように、受講者個々に内容をカスタマイズしたり、受講する時間や場所に影響されない研修方法を取り入れていく必要がありそうです。