eラーニングの種類｜システムや教材の形態、コンテンツの主な種類は？

企業が社員研修を実施する手段の一つとして、「eラーニング」が注目されています。法人向けのeラーニングシステムを活用すれば、従業員は時間や場所の制約を受けず、オンラインで研修プログラムを受講可能です。そんなeラーニングには、一体どのような種類があるのでしょうか。eラーニングシステムを導入する際は、数あるサービスを比較検討して、自社に適したものを導入しましょう。

本記事では、eラーニングの種類について、「システム」「教材の形態」「コンテンツ」の観点からそれぞれ解説します。今後、自社の社員研修にeラーニングの導入を検討している社員教育のご担当者様は、ぜひご一読ください。

eラーニングの概要

初めに、eラーニングの概要から解説します。企業が社員研修をeラーニングで実施すると、どのようなメリット・デメリットがあるのか、改めて確認してみましょう。

eラーニングとは

eラーニングとは、インターネットを利用した学習形態のことです。スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を使って、オンラインで研修を受講する仕組みとなっています。従来の集合研修のように、講師と受講者が同じ時間に会場へ集まる必要がありません。インターネット環境さえあれば、時間や場所の制約を受けずに、手軽に研修を受講できる点が大きな特徴です。

eラーニングのメリット

柔軟性が高い

eラーニングは時間や場所の自由度が高く、便利な学習方法です。基本的に個人学習となるため、一人ひとりが自分のペースに合わせて学習を進められます。また、個人の学習の目的や習熟度などに合わせて、個別の研修プログラムを受講できる点も魅力だといえるでしょう。

コスト削減につながる

eラーニングで研修を実施する場合は、会場費・移動にかかる交通費・講師への謝礼などの金銭的なコストを削減できます。また、人事担当者が研修会場を手配したり、従業員のスケジュールを調整したりする準備の手間もかかりません。社員研修の運用を効率化して、職場の業務改善が期待できます。

学習履歴を管理しやすい

eラーニングには、受講者の進捗状況や受講履歴をチェックするための「受講管理機能」が搭載されています。システム上で受講状況が可視化されるため、管理者や人事担当者は社員研修の現状を容易に把握できます。また、システムに蓄積されたデータを分析すれば、今後の社員研修の改善に有効活用することが可能です。

eラーニングのデメリット

eラーニングの注意点として、受講者のモチベーションの維持が難しいことが挙げられます。eラーニングは対面型の研修とは異なり、講師からの直接的な指導や受講者同士の交流がないため、学習意欲の自己管理が求められます。対策として、オンラインで講師への質疑応答や受講者同士のディスカッションなど、コミュニケーションの機会を設けると良いでしょう。

eラーニングシステム自体の種類

「eラーニングシステム」とは、eラーニングを実施するために必要な専用システムのことです。または「学習管理システム（LMS）」とも呼ばれます。主に搭載される機能の例として「教材作成・配信機能」「進捗管理機能」「テスト機能」「成績評価機能」「レポート機能」「アンケート機能」などが挙げられます。

ここでは、eラーニングシステムの提供形態の種類や、コンテンツ内容の種類をご紹介します。

提供形態による分類

クラウド型

クラウド型のeラーニングシステムは、インターネット経由でサービスを利用するのが特徴です。そのため、社内で専用のサーバーやソフトウェアを導入・運用する必要がありません。機器の設置や管理が不要なため、初期費用を抑えやすく、保守運用の負担が少ない傾向にあります。その一方で、後述するオンプレミス型と比べてカスタマイズ性は低いといえます。

オンプレミス型

オンプレミス型のeラーニングシステムは、自社のサーバーにシステムを構築して利用するのが特徴です。自社独自のシステムを一から構築できるため、カスタマイズ性が高いといえます。また、自社の社員研修の情報を社内で管理できるため、セキュリティ対策を講じて情報漏えいのリスクを軽減することが可能です。ただし、機器の設置・管理にかかる費用が高くなる傾向にあり、メンテナンスも社内で対応する必要があります。

コンテンツによる分類

汎用型

汎用型のeラーニングシステムは、ビジネスシーンで求められる汎用的な知識やスキルを学習できるコンテンツを提供しているのが特徴です。自社の社員研修に必要な学習コンテンツを提供しているeラーニングシステムを選定すると良いでしょう。

特化型

特化型のeラーニングシステムは、特定の業種や専門分野などに特化した、専門領域の学習コンテンツを提供しているのが特徴です。職種ごとに必要な専門知識や専門スキルを習得させる場合に適しています。

eラーニングシステムによっては、既存のコンテンツに自社のオリジナルコンテンツを追加して、オリジナル教材を作成できます。汎用型・特化型で提供される既存のコンテンツと、社内で制作または外注したコンテンツを組み合わせて、オリジナルコースを作成するのも一つの手です。ただし、オリジナルのコンテンツを一から作成する場合は、社内の研修担当者の人件費や、アウトソーシングの費用が発生する点に留意しておきましょう。

eラーニングシステムで扱う教材の形式の種類

eラーニングシステムでは、テキストから動画まで、さまざまな形式の教材コンテンツを扱うことが可能です。自社の人材育成の目的やニーズに合わせて、効率的かつ効果的に学習できる形式を選ぶと良いでしょう。ここでは、教材の形式の種類をご紹介します。

資料

文章を中心として、画像や図を効果的に使いながら研修内容を解説する、資料のタイプの学習教材です。多くのeラーニングシステムでは、こうしたテキストベースの資料が教材コンテンツとして用いられています。ファイル形式には、文書ファイルやPDFなどが使用されます。必要に応じてスライドで解説したり、一部分のみ映像やアニメーションで解説したりすることも可能です。

講義の動画

動画で研修内容を解説するタイプの学習教材です。動画教材は、機器の操作方法などの実践的なノウハウを映像で見せられるので、受講者が内容を具体的に理解しやすいという特徴があります。また、eラーニングのサービスによっては配信された動画が一定期間内に見放題となるため、受講者は講義動画を繰り返し視聴して、復習することが可能です。

なお、動画で学習するタイプのeラーニングには、「ライブ型」の種類もあります。ライブ型では、講師がリアルタイムで動画を配信する点が大きな違いです。オンラインで双方向のコミュニケーションが取れるため、集合研修のような臨場感や適度な緊張感があり、受講者のモチベーションを維持しやすいのが特徴です。研修内容に応じて、講義動画とライブ型を使い分けると良いでしょう。

アニメーション動画

eラーニングにはアニメーション動画もよく用いられます。アニメーション動画は、重要なポイントなどを強調しやすいので、受講者にわかりやすい教材といえます。特に初学者に難しい概念をかみ砕いて説明することに向いています。具体的なケースやシーンなどもアニメーションで再現しやすいので、記憶に残りやすく、学習内容を定着させやすいのもメリットです。

また、アニメーション動画はスライド資料との相性が良いのもポイントです。アニメーションで概要やポイントを押さえながら資料を確認して学びを深めることができます。また、アニメーション動画を見た後に、グループワークなど、他のリアルな研修と組み合わせてみるのもよいでしょう。

eラーニングに活用する主なコンテンツの種類

eラーニングの学習コンテンツは、あらゆる研修の場面に対応しています。階層別研修からビジネススキル別の研修まで、企業の人材育成に必要なカテゴリーを幅広くカバーしています。ここでは、eラーニングで取り扱いのある主なコンテンツの種類をご紹介します。

【階層別】コンテンツの種類

新入社員研修

新入社員を対象とした基礎研修のeラーニングコンテンツです。基本的なビジネスマナーや業界知識など、社会人として働く上で必須の基礎知識を学ぶ内容となっています。主に、学生から社会人になりたての若手社員に対して、マインドチェンジを促す目的で実施されます。新入社員の早期戦力化へ向けて、仕事の基礎を身につけさせるとともに、自ら考えて行動できる人材へと育成を行います。

中堅社員研修

組織のリーダー候補である中堅社員を対象としたeラーニングコンテンツです。中堅社員に実務の経験を積ませながら、さらに視野を広げて組織のリーダーへと成長を促す目的で実施されます。研修では、管理職を補佐するための「フォロワーシップ」のほか、後輩社員を統率するための「リーダーシップ」、課題意識を持って組織を改善するための「課題解決」といった内容を学びます。

管理職研修

リーダーとして組織を導く管理職向けのeラーニングコンテンツです。組織のマネジメント層に求められる、広範囲にわたる重要なスキルを身に着けさせる目的で実施されます。具体的には、適切な経営判断で組織を導くための「マネジメント」や「リスク管理」、部下の指導やキャリア支援のための「コミュニケーション」といった内容を学びます。座学の講座だけでなく、実際の現場を想定した演習に取り組む研修も多くなっています。

【スキル別】コンテンツの種類

ビジネススキル研修

特定のビジネススキルの習得を目的としたeラーニングコンテンツです。ビジネスシーンで実践的に役立つ「プレゼンテーション力」「コミュニケーション力」「営業力」「マーケティング力」といった目的別のスキルを受講者に習得させます。eラーニングシステムによっては、具体的な場面をイメージしながら業務のシミュレーションができるため、高い学習効果が期待できます。

ITスキル研修

ITスキルの習得を目的としたeラーニングコンテンツです。現代のビジネスパーソンに必須の「ITスキル」や「ITリテラシー」を学習させることで、受講者のスキルアップを促進します。また、近年は基本のITスキルと併せて「情報セキュリティ」を学習させるケースも少なくありません。企業の身近にある情報セキュリティのリスクを学び、予防意識を高めることで、情報セキュリティ事故の発生を防ぎます。

語学スキル研修

語学スキルの習得を目的としたeラーニングコンテンツです。主に海外に拠点を有する企業や、海外と取引を行う企業向けに、グローバル人材を育成するために実施されます。その際は、単に外国語での意思疎通を行うだけでなく、多様な業務環境で活躍する上で欠かせない「異文化理解」まで含めて学ぶケースが多くなっています。

マネジメントスキル研修

マネジメントスキルの習得を目的としたeラーニングコンテンツです。主に、マネジメント層のスキル向上のために実施されます。管理職の役割やマネジメントの定義など、基礎から体系的に学ぶことが可能です。「目標管理」「組織運営」「部下指導・部下育成」「問題解決」といった幅広いマネジメントスキルの習得をめざします。

eラーニングシステムの選び方

eラーニングを導入して研修効果を高めるには、どのようなシステムを選べば良いのでしょうか。自社の導入目的に合わせてツールを比較検討することが大切です。システム導入の際は、以下でご紹介する選び方を参考にしてください。

コンテンツの充実度

eラーニングシステムで提供される学習コンテンツの充実度は、サービスによって異なります。そのため、自社の社員研修に必要な内容が網羅された、コンテンツが豊富なサービスを選ぶことがおすすめです。また、各種コンテンツで最新の情報が提供されているかどうかも重要となります。「研修内容に現時点の最新情報が反映されているか」「ビジネスシーンのトレンドが押さえられているか」などのポイントを重視すると良いでしょう。

なお、eラーニングシステムによっては、受講者が知識やスキルを一方的にインプットするだけでなく、アウトプットを促す設計となっている学習コンテンツもあります。インプットとアウトプットの双方に取り組むことで、学んだ内容が自分ごと化されて、学習効果を高めることが可能です。

カスタマイズ性の高さ

eラーニングシステムの中には、既存の学習コンテンツを選択して組み合わせられるサービスや、自社でのコンテンツ作成に対応可能なサービスもあります。研修の目的やニーズに合わせて、コンテンツを選定したり自社コンテンツを盛り込んだりすることで、適切なカリキュラムの構築が可能です。「学習コンテンツの組み合わせが可能か」「オリジナルの教材制作に対応しているか」などのポイントを確認してみましょう。

使いやすさ

eラーニングシステムを社内に定着させるには、受講者や管理者の使いやすさに配慮して、操作性の高いシステムを選ぶことも大切です。例えば、簡単に操作や入力ができるシステムや、マルチデバイス対応のシステムなら、受講者の負担を抑えられます。また、管理機能が充実しているシステムは、管理者の業務効率化につながります。このほかにも、ベンダーによる導入前後のサポートの有無を確認しておくと安心です。

コストパフォーマンスの高さ

eラーニングシステムを導入する際は、初期費用や月額料金が発生します。ベンダーごとの料金プランを比較して、自社にとって機能とランニングコストのバランスが良いサービスを選びましょう。その際は、eラーニングシステムの提供形態によっても費用に差が出る可能性があります。初期費用の負担を抑えやすいクラウド型のeラーニングシステムや、組織の規模に応じた料金体系で利用できるeラーニングシステムがおすすめです。

自社に適した種類のeラーニングシステムを選びましょう

ここまで、eラーニングの種類を「システム」「教材の形態」「コンテンツ」の観点からご紹介しました。eラーニングシステムの導入・運用を成功へ導くには、数ある種類の中から自社に適したサービスを選ぶことが大切です。コンテンツの充実度やカスタマイズ性の高さなどのポイントに着目して、自社の目的やニーズに適したeラーニングシステムを選ぶと良いでしょう。

NTT HumanEXでは、企業様の社員研修におけるeラーニングの活用支援を行っております。多彩な学習コンテンツを提供する「研修・eラーニング」、人事制度・組織開発を支援する「コンサルティング」、組織の現状を調査する「サーベイ・システム」などの各種ソリューションをご用意しています。多様な業種での導入実績があるため、どうぞお気軽にご相談ください。