心理的安全性を高めるマネジメントとは?実践のポイントを場面別に解説
会議でメンバーから意見が出てこない、トラブルが事後報告になってしまうなど、チーム内のコミュニケーションに悩んでいる管理職の方もいらっしゃるでしょう。メンバーを思って取っている日々の言動が、意図せず本音や率直な意見を引き出しにくくしているケースもあります。
本記事では、心理的安全性を高めるマネジメントに求められる役割から、会議・1on1・フィードバック・トラブル対応といった場面別の具体的な行動例、リモートやハイブリッド勤務での工夫、管理職が避けたい行動、職場全体で心理的安全性を定着させる仕組みづくりまでを整理して解説します。
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心理的安全性を高めるマネジメントに求められる役割とは?

心理的安全性を高めるマネジメントにおいて、管理職に求められる役割は多岐にわたります。単に優しい言葉をかけることではなく、チーム全体が目標に向かって機能するための土台作りが求められます。
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良好な人間関係の構築ではなく、成果創出の基盤を築く役割を担う
管理職に求められるのは、単に和やかな人間関係を築くことではなく、 チームとして成果を生み出すための基盤を築くことです。よくある誤解として、メンバーに厳しく接しないことが心理的安全性だと勘違いされるケースがあります。大切なのは、高い目標に対しても率直に意見を言い合える関係性を築くことです。目標達成に向けて何が足りないのか、どのようなサポートが必要なのかを自由に議論できる土壌を作りましょう。良好な人間関係は、建設的な議論を積み重ねた「結果」として自然に形成されるものと考えられます。基盤があるからこそ、メンバーは失敗を恐れずに新しい挑戦ができるようになり、組織全体の生産性向上にもつながっていくでしょう。
多様な意見や価値観を尊重する
心理的安全性の高いチームを実現する上で求められるのが、メンバー一人ひとりの多様な意見や価値観を尊重する姿勢です。年齢・経験・専門領域・バックグラウンドが異なるメンバーが集まるチームでは、同じ課題に対しても捉え方や解決策のアプローチは人それぞれ異なるでしょう。管理職は、自分の考えと異なる意見が出た際に頭ごなしに否定するのではなく、まずは「なぜそう考えたのか」を丁寧に聴く姿勢を持つことが重要です。少数意見や反対意見は、チームの盲点を補い、意思決定の質を高めるヒントになり得ます。発言量に偏りが出ないよう、口数の少ないメンバーにも意識的に発言の機会を渡すなど、全員が安心して意見を出せる場づくりも管理職の役割でしょう。
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管理職自ら弱みを見せ率直な意見を引き出す
管理職が必要以上に完璧であろうとする姿勢は、時にメンバーの心理的安全性を下げる要因になり得ます。リーダーが断定的な言動を続けると、メンバーは異論や違和感を口にしづらくなり、議論が一方通行になりがちです。そこでおすすめなのが、「この分野は詳しくないので教えてほしい」「自分の判断にも迷いがある」と、リーダー自ら自身にも不得手な領域があると示すことです。リーダーが自らの至らない点を率直に認めることで、メンバーは「意見や指摘をしても否定されない」と感じ、反対意見や改善提案も臆せず発言できるようになるでしょう。自己開示の姿勢はチーム内の信頼関係を深め、立場や経験にかかわらず率直な意見が飛び交う土壌になり得ます。
日常のマネジメントで心理的安全性を高める行動例
ここからは、日常のマネジメントシーン別に、心理的安全性を高めるための具体的な行動を解説します。日々の少しの工夫が、チームの空気を大きく変えるきっかけになるでしょう。
| 場面 | 意識したい具体的な行動 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 会議 | リーダーは最後に意見を述べる | メンバーが自分の考えを気兼ねなく発言できる |
| 1on1 | 進捗管理だけでなく悩みやキャリアを聞く | 個人のモチベーションと信頼感が向上する |
| フィードバック | 人格ではなく行動に焦点を当てて伝える | 感情的な反発を防ぎ具体的な改善につながる |
| トラブル対応 | 犯人探しをやめ仕組みの改善を議論する | ミスの隠蔽を防ぎ早期の課題発見につながる |
| メンバーからの業務改善提案 | 小さなアイデアでもまずは感謝を伝える | 継続的な提案のカルチャーが根付く |
【会議】管理職は自らの意見を急がずメンバーの声に耳を傾ける
会議で管理職が最初に意見を述べると、発言が「正解」として扱われ、異論が出にくくなる恐れがあります。管理職は自分の考えを口にすることを急がず、まずはメンバーの声にじっくりと耳を傾ける姿勢を持ちましょう。発言の少ないメンバーに対しては、意図的に問いかけて意見を引き出す配慮も求められます。自分の意見を十分に聴いてもらえていると感じることで、メンバーは主体的に会議に参加するようになるはずです。管理職が「聴く」時間を十分に確保することで、多様な視点が拾い上げられ、より質の高い意思決定につながっていくでしょう。
【1on1】業務の進捗だけでなくキャリアや悩みにも向き合う
1on1ミーティングが単なる業務の進捗確認の場になっているケースは少なくないでしょう。しかし、心理的安全性を高めるためには、目の前のタスクだけでなく、メンバーのキャリアや抱えている悩みにも正面から向き合う姿勢が求められます。具体的には、「最近業務で困っていることはないか」「将来どのようなスキルや役割にチャレンジしたいか」といった問いかけを行い、メンバーが本音を語れる時間を確保しましょう。相手の話を途中で遮らず、安易にアドバイスで終わらせないことも重要と言えます。ときには一緒に解決策を考え、キャリアの選択肢を提示するなど、伴走者としてのかかわりが信頼関係を深めるでしょう。
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【フィードバック】人格でなく具体的な行動の改善を促す
メンバーのミスや課題を指摘する際、伝え方を間違えると心理的安全性が損なわれる恐れがあります。「なぜこんなミスをするのか」「意識が低い」といった人格や性格を否定するような言葉は避けましょう。代わりに、「この手順が抜けていたから、次はどう工夫できるか」と具体的な行動に焦点を当てるのがおすすめです。起きてしまった事象と、解決するための未来の行動について話し合うことが重要です。行動に焦点を当てたフィードバックは、メンバーに冷静な自己分析を促します。改善に向けた前向きなエネルギーを引き出すためにも、言葉選びには十分な注意を払いましょう。
【トラブル時】犯人探しでなく仕組みの改善に焦点を当てる
トラブルやミスが発生した際、誰が悪いのかを追及する「犯人探し」はチームを萎縮させかねません。叱責への懸念が強まることで、問題や懸念事項の報告をためらうようになり、重要な情報が適切なタイミングで共有されにくくなる可能性があります。問題が起きたときは、「なぜミスが起きてしまったのか」という仕組みの欠陥に目を向けましょう。システムのエラーなのか、マニュアルの不備なのか、チーム全体で原因を分析する姿勢が求められます。ミスを個人の責任だけでなく、業務プロセスの改善機会として捉える認識を共有することで、問題を報告・共有しやすい組織風土を形成できます。
【改善提案】小さなアイデアでも否定せず感謝を伝える
メンバーから業務改善の提案があった際、最初から「難しい」「コストがかかる」と否定から入るのは控えましょう。一度否定されると、次から提案しようという意欲が削がれかねません。たとえ実現が難しいアイデアであっても、まずは「提案してくれてありがとう」と感謝を伝えるのがおすすめです。あわせて、どうすれば実現できるかを一緒に考えるスタンスをとるとよいでしょう。小さな発言が歓迎される経験を積み重ねることで、チーム内に提案のカルチャーが育まれるはずです。多様な視点からのアイデアが、結果的に業務効率化の大きな一歩につながる可能性もあります。
リモート・ハイブリッド勤務で心理的安全性を保つマネジメントの工夫

近年、働き方がオフィス中心から在宅やハイブリッドへ広がってきました。物理的な距離があるからこそ、意識的にコミュニケーションを設計しなければ、発言のしづらさや孤立感が生まれやすくなるでしょう。ここでは、距離のある環境ならではの注意点と、管理職が取入れたい工夫を整理します。
オンライン会議で発言機会の偏りを防ぐ進行にする
オンライン会議は対面と異なり、相手の呼吸や表情を読みとりにくい傾向にあるため、声の大きい人や役職上位者ばかりが発言する状況が起こりやすくなります。特に画面越しでは話を切り出すタイミングがつかみにくく、遠慮してしまうメンバーも少なくないでしょう。管理職は司会役として、あらかじめ発言順を決めておく、チャット欄への意見投稿を促す、といった進行の工夫を取入れましょう。無言のまま会議が終わるメンバーが出ないよう、「〇〇さんはどう感じましたか?」と穏やかに投げかけるのもおすすめです。
テキストコミュニケーションは意図や感情が伝わりにくい点に配慮する
チャットやメールでのやりとりは、対面と違って表情や声のトーンといった非言語情報が伝わらないため、書き手の意図や感情がそのまま届きにくいという特性があります。たとえば「了解しました。」といった簡潔な返信が続くと、メンバーは不必要な不安を抱いてしまうこともあるでしょう。指示や依頼の文面も、省略しすぎると意図が正しく伝わらず、認識のズレを生む原因になります。管理職は、感謝や労いの一言を添える、絵文字やスタンプを適度に使うといった工夫で、対面での柔らかい表情や声色に代わるニュアンスを補いましょう。加えて、「なぜお願いしたいのか」といった背景や目的まで一文添えることで、指示の意図が伝わりやすくなります。重要な指摘やフィードバック、複雑な議論はテキストで完結させず、オンライン通話や対面に切り替えるなど、手段を使いわけるのもおすすめです。
雑談や偶発的な対話が生まれる場を意図的に設計する
オフィスでは廊下ですれ違ったときの一言や、休憩中のちょっとした会話が、心理的安全性を支える役割の一部を果たしていました。しかしテレワーク中心の環境では、偶発的な接点は自然発生的には生まれにくくなります。朝会の冒頭に短い雑談タイムを設ける、テーマを絞らないオンラインランチ会を月1回開催するなど、意図的に対話の場を設計するのがおすすめです。業務と切り離された時間でお互いの人となりを知る機会を持つと、いざ相談したいことが出てきた際にも声をかけやすい関係性が育まれるでしょう。雑談を「仕組み」として組み込むことが、リモート下での信頼関係を守るポイントとなり得ます。
管理職が避けるべき、心理的安全性を低下させる行動

よかれと思ってやっている行動が、実はメンバーの心理的安全性を低下させている場合があります。ここでは、管理職が無意識にやってしまいがちな避けたい行動について解説します。
細かすぎる進捗管理で裁量と主体性を奪う
業務の進捗を事細かに管理しすぎるマイクロマネジメントは、メンバーの主体性を奪う大きな要因の一つです。手順の一つひとつまで逐一指示されると、メンバーは「自分は信頼されていない」と感じてしまう可能性があります。心理的安全性を保つためには、目的と期限を明確にした上で、達成するための手段はメンバーに委ねるのがおすすめです。困ったときにいつでも相談できる環境を整えておくことが、理想的なサポートと言えるでしょう。裁量を与えられたメンバーは、自ら考え行動することにやりがいを感じ、指示待ちではない自律的なチームへと成長していくはずです。
過去のミスを繰り返し指摘し挑戦意欲を低下させる
過去に起きた失敗を何度も引き合いに出す行為は、チーム内に萎縮を生み、メンバーの挑戦意欲を削ぐ要因となり得ます。「また同じ失敗をするのではないか」という上司の不安は、メンバーへのプレッシャーとして伝わり、新しい取組みへの一歩を躊躇させてしまうでしょう。一度解決した問題を蒸し返すことは避け、日頃から前向きに未来の業務へ集中できる環境を整えることが大切です。失敗を許容し、そこから得られる学びを評価する姿勢を貫きましょう。失敗が必ずしもネガティブなものではないと体感できたとき、メンバーは新しい課題にも臆せず挑戦できるようになるでしょう。挑戦の数が増えるほど、チームの成果もそれに比例して大きくなっていくはずです。
同調する特定のメンバーだけを無意識に優遇する
自身の意見に賛同するメンバーを優先的に評価し、異なる意見を持つメンバーを適切に評価しない姿勢は、リーダーとして注意すべき傾向といえます。こうした偏りは無意識のうちに起こりやすく、チーム内に見えない壁を生む要因となり得ます。異なる意見を持つメンバーに対しても、公平に耳を傾ける姿勢が求められます。多様な価値観を受け入れられる環境が、心理的安全性の高い組織の重要な土台と言えるでしょう。評価と接し方の公平性を保つことで、チーム全体に一体感が生まれ、誰もが安心して自分の力を発揮できる職場が実現するはずです。管理職には、自身の言動が特定のメンバーに偏っていないか、定期的に客観視することが求められるでしょう。
職場全体に心理的安全性を定着させるために作りたい仕組み
管理職個人の努力だけでなく、組織全体として心理的安全性を維持・向上させるための仕組み作りも重要です。属人的なマネジメントに頼らないためのアプローチを解説します。
| 仕組み化のアプローチ | 実施する具体的な内容 | めざすゴール |
|---|---|---|
| 共通ルールの策定 | チーム内のコミュニケーション指針を作成 | 誰もが同じ基準で安心して対話できる状態 |
| サーベイの実施 | 定期的なアンケートで組織状態を可視化 | 感覚に頼らずデータにもとづいた課題解決 |
| 外部研修の活用 | 専門家によるワークショップや研修を導入 | 固定化した組織風土を見直し、共通言語を形成する |
管理職とメンバー共通のチームルールを策定する
心理的安全性を保つためには、リーダーだけが気をつけるのではなく、メンバー同士のコミュニケーションにもルールが必要です。たとえば、「相手の話を最後まで聞く」「意見を否定する時は代替案を出す」といった簡単な指針をチームで作りましょう。ルール策定のプロセスには、メンバー全員を巻き込むのがおすすめです。自分たちで決めたルールだからこそ、当事者意識を持って守ろうとする心理が働きやすいと考えられます。共通のルールがあることで、もし不適切な発言があった場合にも軌道修正がしやすくなるでしょう。
【関連記事】チームビルディングとは?目的やメリット、具体的な手法をわかりやすく解説 | 社員のエンゲージメント向上を支援する 株式会社 NTT HumanEX
定期サーベイでチームの状態を客観的に把握する
チームの心理的安全性がどの程度のレベルにあるのかを、管理職の感覚だけで判断するのは避けましょう。定期的に組織サーベイやアンケートを実施し、メンバーのリアルな声を拾い上げる仕組みを整えるのがおすすめです。質問項目には「自分の意見が歓迎されていると感じるか」「ミスを報告しやすいか」といった内容を盛り込みます。得られたデータはチームに還元し、改善に向けた対話のきっかけとして活用するのが理想的です。客観的なデータにもとづくことで、課題の優先順位が明確になるはずです。定点観測を続けることで、マネジメント施策の効果測定にも役立てられるでしょう。
風土変革が難しい場合は外部の専門研修を活用する
長年の慣習や社風により、社内の人材だけで心理的安全性を高めるのが難しいケースも存在します。そのような場合は無理に自力での解決をめざさず、外部の専門家による研修を導入するのがおすすめです。第三者の視点が入ることで、チーム内で硬直化した関係性が見直され、対話の糸口が生まれやすくなるでしょう。外部の知見を適切に取入れることで、自力での改善よりも早く、効果的な組織風土の変革が期待できるでしょう。状況に応じて専門家の力を借りるという判断も、マネジメントの重要な選択肢の一つと言えるでしょう。
ただし、研修を自社に取入れる際は、講義を聞くだけで終わらない、参加者の行動変容にまでつながるプログラム設計が求められます。実践型研修の具体的な組み立て方や、学びを職場に定着させるためのコツについては、下記の関連記事で詳しく解説しているため、あわせて参考にしてみてください。
【関連記事】心理的安全性研修の作り方は?実践的なプログラム内容と定着のコツを紹介 | 社員のエンゲージメント向上を支援する 株式会社 NTT HumanEX
管理職の役割認識をアップデートするeラーニング「攻めの心理的安全性」
心理的安全性を高めるマネジメントは、チームの成果や挑戦を支える上で管理職に求められる重要な役割です。多様な知見や経験を持つメンバーの力を引き出し、最適解を導く組織の実現には、率直な意見交換や建設的な議論を、成果を生み出す土台として理解し、実践することが重要です。
NTT HumanEXが提供するeラーニング「攻めの心理的安全性」は、わかりやすいアニメーションの動画とアウトプットワークで、管理職の役割認識を”衝突を避けることを優先する姿勢”から”建設的な議論で成果を引き出す姿勢”へ転換していくサービスです。心理的安全性を単なる「居心地の良さ」で終わらせず、チームの挑戦や成果につなげたい企業さまは、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
この記事のポイントをまとめます。
- 心理的安全性は良好な人間関係だけではなく、率直な議論で成果を生み出すための基盤になる
- 会議・1on1・フィードバック・トラブル対応など場面ごとに管理職がとりたい行動は異なる
- リモート環境では発言機会の設計や雑談の仕組み化で、距離による孤立感を補う工夫が求められる
- マイクロマネジメントや過去のミスの蒸し返し、特定メンバーの優遇は心理的安全性を下げる可能性がある
- 個人の努力だけでなく、共通ルール・サーベイ・外部研修など組織的な仕組みで定着させること
まずは自身のマネジメントスタイルを振り返ることから、成果につながるチーム作りに取組んでみてください。


