STEP1 人材育成の基礎知識

第4回 メンターとメンティーの違いとは?

メンター制度

バブル崩壊以降、日本企業で強引に進められた成果主義の弊害として、個人の成果が強く求められたことによる組織内の人間関係の希薄化が問題になりました。
また成果を最大化する為に新入社員の段階から多くの意識改革やスキル付与を進めるものの、それら若手社員が学ぶ様々なスキルを先輩社員が共通言語として持ち得ておらず、OJT不全を起こすという問題も散見されました。

そんな時代背景を基に注目されるようになったのが「メンター制度」です。
以前から仕事の知識や技能を支援する「ブラザー・シスター制度」というものは存在していましたが、メンター制度は組織から役割を与えられた先輩社員(以下「メンター」と言う)が、特定の後輩(以下「メンティー」と言う)に対して知識や技能支援にとどまらず、、将来に向けたキャリア形成のロールモデルとなり、全人格的に向き合うというミッションを担っています。

成果主義の加速により、実務的なスペック重視で中途採用の即戦力を求めていたような企業も、ここ最近ではメンター制度を導入し、新卒社員をじっくり育てながら中長期的に盤石な組織基盤を創る方向性にシフトしつつあります。

また、組織の実態をよく理解している育成担当者は、比較的容易に研修コンテンツを構築できる若手社員育成の前に、若手社員のメンターとなる中堅社員の育成に力を注ぐようになりました。
まずは組織の共通言語をメンターに理解させ、若手社員の育成へ繋げていくことによって、組織風土を醸成し、成果へと繋げていくのです。

それでは以下3つのポイントに沿ってメンター制度をより深く理解してみましょう。

ポイント1 メンターに求められる2つの役割

①教師・コーチ・アドバイザー・サポーター的役割

当然ながら仕事の知識や技能に対して指導したりアドバイスするという役割は大きく担っています。
メンターの経験を基に、時には教師のように厳しく諭すこともありますが、メンティーの直接的な上司ではないので常に「指示命令」という厳しいスタンスではありません。
あくまでもメンティーが気軽に相談できたり、支援を要請することのできるフランクな関係がそこにはあります。

②ビジネスパーソンとしてのロールモデル

業務上の支援者という顔以外に、メンターはビジネスパーソンとしてのロールモデルの役割も担っています。
メンターの入社当時の失敗談や成功体験、苦悩や喜び・感動秘話、そして社内での人間関係や自身が思い描くキャリアパスなどは、年次の近いメンティーに臨場感を帯びて伝わります。
上司ほど年齢が離れすぎないことによって、メンターの言動はメンティー自身が将来をデザインする上で鮮明な道しるべとなり、モチベーションが担保しやすくなるのです。

ポイント2 信頼しあえるメンタリング関係を構築する

上っ面ではダメ。全人格的に向かい合う覚悟を持つ

メンタリング関係の実現には複合的なスキルが必要です。
たとえばコーチング・カウンセリングといったコミュニケーションスキル・心理学に基づいた動機づけフレームなど、メンティーのサポートを行う上では様々なテクニカルスキルが求められます。

しかしテクニカルスキルばかりではメンタリング関係を構築できないのも事実です。
メンティーの状況に合わせて、時には一緒に一喜一憂しながらお互いの感情を共鳴させることによって「人間関係」やお互いの「態度・スタンス」を醸成・共有できなければいけません。

ポイント3 組織と人についての十分な知識を持つ

所属する会社の知識をしっかりと持っていること

メンターが機能すると、メンティーはその存在を憧れを持ってモデリング(真似)しようとします。
但しメンター制度で注意すべきことは、メンターが組織から公に役割を与えられた戦略的位置づけを持った人物であるということです。
つまりメンティーには、メンター個人の人間性にコミットさせるのではなく、「その組織が目指す、あるべき人物像」にコミットさせなければなりません。

更に言えば、メンターのミッションは組織の「あるべき姿」を日々の業務で具現化していなければなりません。
だからこそ、組織の求める知識や技能だけではなく、その企業に所属する組織の一員として、判断基準やモノの見方をしっかりと言語化できるだけの視座視点が求められるのです。

部下が職業人として成長していく為の知識もしっかりと持っていること

当然ながらメンターはメンティーに対して、職業人としての成長も促さなければなりません。
その職務におけるプロフェッショナルとして大成するために必要なテクニカルスキルを伝授していくわけですが、ここで大切なことは「職業人としてメンターも共に成長していく」という点にあります。

メンターと言えど、実務における経験値は上司ほど高いわけではありません。
職業人としてはメンターもメンティーもまだまだ大いに成長段階にあります。
「メンティを支援する・伝える」というプロセスの中で「どう伝えればよいのか」「この業務のポイントはどこか」「このプロセスで本当に良いのか」といった実務上の疑問点を解消しながらメンター自身も大いに学び、成長していくのです。

最後に、メンター制度に対する組織の期待は大きなものですが、上手く機能させられていない組織も数多く存在します。

それはメンター制度が組織としての取り組みのはずなのに、その運用をメンターに任せ切りにしてしまうからにほかなりません。
確かにメンティーの支援者はメンターですが、そのメンターを支援するのはメンターの上司であり、育成担当(人事部)であることを、組織として共通言語にしておく必要があると言えるでしょう。

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